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スターレイル用

なんでもかわいい


・玉兆=スマホ。腕輪型玉兆=スマートウォッチ。結盟玉兆=防犯ブザー。みたいな認識で書いてる(間違えてたらごめんなさい
・呪符=プログラム(青雀が言ってた
・既に出来てる楓応
・応星なら何でも可愛い丹楓様
・わちゃわちゃイチャイチャしてるだけ

 ▇◇ー◈ー◇▇




「最近、玉兆の調子が悪くてな、診て貰いたい……」
 基本的に、無茶ばかりする応星を拉致するために工房へ来る丹楓が珍しく修理依頼を出してきた。本人曰く、特に何もしていないのに壊れた。らしい。

 大変良く聞く文言である。
 基本的に何かしなければ機械は勝手に壊れたりはしない。
「言いたい事は色々あるが、使えないと不便な事も多かろう。特別に俺が診てやるよ」
 申し訳なさそうに両手で差し出された玉兆を手に取れば、薄暮の空に一等星と月が輝いている外装が目につく。基本的に身の回りは人任せな丹楓であれば買い与えられた物をそのまま使ってそうなのに、わざわざ外装を特別製にしたのか。
 余程、この絵柄が気に入ったのか考えながら電源が落ちている玉兆を起動し、
「どんな風になるか説明できるか?」
 画面が点くまでの間、問診をしてみる。
「兎に角、動作が重くてな、文章一つ送るのにも手間取るくらいだ。気が急いて画面を叩くと止まってしまう」
「んー、成る程。それで最悪、強制終了までしちまう感じか」
 応星が訊ねれば丹楓は頷き、直るかどうかを訊ね返す。
「見てみないと何とも言えんが、悠長な長命種様だからなぁ百年前の端末とかじゃないのかぁ?」
「何を言うか、去年購入したばかりだ」
 薄笑いを浮かべつつ半信半疑で起動した玉兆を弄り、動作が矢鱈と重い不快感を味わいながら確認すれば確かに最新の物である。それがここまで不調になる原因が分からず、呪符の不具合を疑う。
 簡単な修理や古すぎるものの買い直しを推奨するだけで終わると思いきや、中々な面倒に発展しそうな事態に眉間の皺が寄った。
「む、其方でも難しいのか?」
「中身まで開いて呪符構成まで確認するとなると、一旦預かりになるなぁ」
 可笑しな動作をしているアプリケーションが無いか確認をするも、購入時そのままなのか動作に干渉するような物は無い。丹楓の玉兆を修理する事は吝かではないものの、これに手を取られると現在抱えてる納期が間に合わなくなる可能性を考えて、最後の希望とばかりに容量の部分を見ると、割合的に画像や動画が大部分を占めていた。
 数値は容量限界まで詰め込まれており、余裕など皆無の状態。これは動作が鈍くなって当然である。
「何の画像集めてんだよお前……」
「元気になるものを少々」
 画像を整理し、逼迫している容量を改善させれば解決しそうである。
 茶化しつつも預かりにならず、内心、胸を撫で下ろながら写真一覧を確認すると、画面一杯に現れた物に応星は、は?と、引っ繰り返った声が出た。
「なんだこれは」
「余の大事なものだが」
 一覧には隠し撮りらしい応星の写真が羅列されており、画像も動画も全て己であると認識すると若干、怖気を感じた。
「何これ?」
「余の宝」
 同じ質問をしても、納得のいく回答はない。
「撮られてて全く気付かない俺もどうかとは思うが、こんなに容量圧迫するほど要るか⁉写真⁉動作が変な理由これだぞ!」
「其方は過集中になると周りが見えぬ故、それを毎度撮っておったが問題あるか?」
 どうにも話が噛み合わず、もどかしさに応星は呻きながら天井を煽り見る。
「こ、これとかさぁ、白目剥いて涎垂らして寝てるようなもん撮らなくていいだろ!」
「愛いものだ」
 数日徹夜してそのまま仮眠室に倒れ込んだであろう薄汚れた状態で、瞼がしっかりと閉じていない上に口も緩く開いて、涎を流しながら熟睡している不細工な面など、眺めて何が楽しいのか応星には解らない。
「消す」
「ならん!」
「要らんだろ⁉」
「余には必要なものだ!」
 消去しようと応星が画面に触れようとすると、丹楓が羽交い締めにして止める。
「本物にいつでも会えるんだから要らんだろうがっ!」
「其方は直ぐ『忙しいから来るな』などと申すであろう⁉勤めておる合間にも見て癒やされておるのだ。消すなどまかりならん!」
 丹楓には珍しく焦って声を張り上げ、全身を使って写真を消そうとする応星を止める。
 案外、俗っぽい癒やし得ている事実にも驚きつつ、応星は応星で、容量を圧迫する水準で無限にありそうな画像が気味悪く、しかも写りの悪い写真など存在する事自体が赦せず懸命に抵抗する。
「俺が嫌だつってんだから消させろ!」
「全て愛いではないか⁉何がならんのだ⁉」
 言い争う声に、何事かと工房に勤める職人達が執務室の入り口に屯する。
 龍尊と百冶が何をか言い争い、揉み合っている状況が一大事であると分かる程度で、原因もなにも分からず動揺が広がるばかり。
「もう良い、頼まぬ……!」
 丹楓が力任せに己の玉兆を奪い返し、上衣の袂に仕舞い込んで応星から守る。
 彼は細身に見えても応星と変わらぬ上背があり、長柄武器を振り回す腕力自体は敵わないため、守りに入られると攻略は至難の業だ。
「帰る」
「玉兆は置いてけ。真っ新に初期化してやる」
「ならん」
 玉兆の入った袂を庇い、丹楓が後退りをしながら応星と距離を取り、廊下に出ると人の壁を利用し、雲吟の術にて姿を消してまで逃亡した。かの英雄である飲月君を酷く狼狽えさせた挙げ句、撤退させるとは百冶殿は何をしたのか。こそこそとお喋り雀は口さがない。
「何事……、ですか?」
「あー、彼奴の玉兆の調子が可笑しいから手っ取り早く初期化しようとしたら余っ程消されたくないものがあったようでな、拒否されただけだ……」
「なるほど……」
 勇気のある弟子が応星の回答に半分納得、半分疑惑を持った返事をする。とは言え、龍尊と百冶の問題に首を突っ込む猛者は存在せず、有耶無耶になって事態は収束した。

 ▇◇ー◈ー◇▇

 騒動から数日後、月が天上に輝く夜。
 龍尊の宮にて酒を嗜みながら応星が玉兆を出すよう丹楓に要求すると、あっさりと渡されて拍子抜けし、写真を確認して直ぐに納得する。
「自分で消したのか、偉い偉い」
「うむ、動作も随分と軽くなった」
 応星は機嫌良く丹楓の頭を撫で、丹楓は容量を圧迫していた画像を整理した結果の報告をする。
「本物が近くに要るんだから写真なんか二度と撮るなよ?」
「嫌だが?その時しか撮れぬものがある」
 丹楓の科白に、これは写真を処分していないと察した応星は目の前に仁王立ちになり、
「中身を移した別の玉兆なりあるだろ?出せ」
 と、要求する。
「断る。中身ごと玉兆を処分する気であろうと余でも判るわ」
 応星の要求に、丹楓が顔を逸らして拒絶する。
 それでも応星は諦めず、丹楓を詰めるが埓が明かず、酒を呑むどころではない。

 画像は消さない。
 写真を撮るのも止めない。
 いっそ、池に放り投げて玉兆を完全に壊してやろうか目論むが、公私共に連絡に必要な物を私的な感情で壊すような真似は憚られた。
「今後、写真撮ったら工房出禁にするぞ」
「ほう、其方の毎度の無茶は、余が面倒を見る前提でやっておるような節があるが、本当に出禁にしても良いのか?」
 丹楓の得意げな顔を見下ろし、応星は苦虫を噛み潰す。
 実際、多少怪我をしようが倒れようが、癒やしの術を使える丹楓がどうにかしてくれると当てにしている甘えは少なからず自覚していた。
「じゃあ、寝てるところは止めろ。あんな不細工見て何が楽しいんだ」
「其方が安らかに眠っておると安心する」
「安眠記録かなんかか……、写真撮らずに確認だけしろ」
「良いではないか。愛らしい者を愛でたくなるのは致し方ない感情であろう」
 駄目だ此奴。
 応星は脱力し、牀へ戻ると手酌で酒を煽る。

 恋は盲目。
 痘痕も靨。
 蓼食う虫も好き好き。

 そんな言葉は各種あるが、丹楓はどんな応星でも可愛くて仕方が無いらしいとだけ理解した。
「人間を超越した神様の感覚は解らん……」
 昨今、随分と人間くささが増した様子ではあるものの、龍の末裔である龍尊は衰えたとは言え、只人とは隔絶された感覚を持っている。彼には、応星が余程小さくて愛らしい生き物にでも見えているのだろう。
「あーもう、解った。解ったから、他の奴には絶対、見せるなよ。現像して部屋に飾ったりしたら速攻で回収して燃やすからな」
 妥協に妥協して、譲歩すれば丹楓は無言で嫌な予感が過る。
「現像してる?」
「それはしておらん」
「それは?まさか、誰かに見せたのか?」
 そもそも、玉兆の容量が逼迫している事すら解ってなかった丹楓が、どうやって別の端末に移す発想が出来たのか疑問に思うべきだった事に気がつき、他者の介入に青ざめる。
 龍尊の可笑しな趣味だとか、また短命種が飲月君を惑わしたなどと下らない理由で詰られ、無駄に疲弊する未来を幻視してうんざりする。
「景元にしか見せておらぬ。こういう物は若者の方が詳しかろう」
 龍師などに相談すれば、また応星に良からぬ害が行くとは丹楓とて理解している。己よりも年齢が上で頭の固い長老連中に最新機器を見せたとて意味はなし。とも。
「よりによってあの餓鬼か……」
 白珠、鏡流辺りであれば看過してくれるだろうが、応星との口喧嘩が多い子供があんな物を見て、揶揄材料にしないとは思えない。或いは、憐れまれるのか。
「もー、お前さぁー……」
 応星は顔を覆い、もどかしい気持ちを言語化出来ず、膝を支えに項垂れる。
 丹楓は応星が嘆く問題点を理解しないまま、落ち込んでいる様子から取りあえず頭を撫でて慰めてみるが効果は無い。

 それから、丹楓が持つ玉兆の透鏡には応星手製の封がされ、『剥がしたら絶交』などと子供じみた言葉が書かれていた。

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