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スターレイル用

推しカプてぇてぇ

※二相楽園実装前のただの妄想です※

・モブ視点の楓応?
・モブが煩い
・架空のゲームの主人公な五騎士
・応星が変な本の主役になってたり
・↑などしょーもない捏造各種
・応星や丹楓本人は居ない
・刃ちゃんもいない
・製造元が楓応ライン




 今日も今日とて推しカプが尊い。
 発売されたばかりの『雲上の五騎士』を題材にしたゲームを徹夜でやってしまった。

 もう徹夜が辛い、いい歳の筈なのに推しカプの供給でアドレナリンが出まくっているのか眠くもない。
 今日も元気にお洋服を売って、時間になったら速攻閉店して続きをやろう。

 テレビの電源を落とすと決意を胸に階段を降り、小さいながらも我が城である店のシャッターを開け、コスプレ用の衣装と普段使い用の服をディスプレイしていく。店頭に飾るのは当然、我が推しカプである丹楓と応星の衣装だ。
 幼い頃にゲームで『雲上の五騎士』の物語に嵌まり、仙舟と言う場所で実在した英雄だと知って関連する本を読みふけり、今ではゲーム、小説、漫画、様々な創作を掻き集める妖怪のようになってしまった。恐らくそろそろ本の重さで店の天井が抜ける。これは五騎士が魅力的すぎるからいけない。

 服をマネキンに着せて整えながらゲームのテーマ曲を鼻歌で歌う。
 ゲームはシミュレーションとアクションを上手く融合させたもので、将である丹楓、鏡流、景元、白珠を使って忌み物を殲滅する痛快な戦闘アクションモード、兵士を育成し武器を鍛造するシミュレーションモードがある。
 効率的に訓練を行い、手持ちの兵士が強くなっていく育成要素も楽しいのだが、私が一番楽しんでいるのは武器を供給してくれる応星の工房へと通う事だ。

 応星は雲上の五騎士の一人ではあるが、彼は職人であって将ではないため、基本的に前線へは出て来ない。最初は最推しである応星がプレイアブルとして使えない事を幼子が床に転がって大泣きをするように嘆いたが、工房へ行けばいつでも彼が居るとして気を取り直す。
 操作キャラを丹楓にしてアクションモードで集めた素材を応星に貢ぎ、彼の技術向上に貢献し、無駄に工房を彷徨きながら彼が鉄を打っている様を延々と眺める。
 実に至福である。大概の人は鍛造時間を特殊アイテムでスキップするか、その時間を使って他の素材をとりに行くそうなのだが、私にとっては貴重な推しカプの交流場面なので、それはそれは嘗め回すように眺める。

 ゲームなんだからキャラクターが同じ動作をしているだけだろう。と、言われれば確かにそう。だが侮るなかれ。今作から開発陣に応星推しが居るのか、強い要望があったのか作り込みが素晴らしいのだ。
 前作はただ一枚絵と【鍛造中】との表示されているだけだったが、今作は工房内を歩き回れるだけでなく休憩を取ってキャラが寛ぐ様子まで眺められ、何よりも応星の3Dモデルが神がかった作り込みなのだ。

 簪で纏められた腰まである銀白色の髪が動きに合わせて揺れる様。
 大理石のようなきめ細かい白い肌。
 長い睫が縁取るタンザナイトのような紫に赤が混じった瞳。
 一見、雪の妖精の如く儚い容貌にも見えるが、しっかりと鍛えられた体躯がそこにはある。

 泣きながら拝むしかない。
 加えて鍛造中の応星は、時折、汗を拭う動作を見せる。それがまた陶然とした表情で、実に色気が爆発している。
 そして、鍛造中は話しかけても無視されるのだが、鍛造を終えると『何だ、待っててくれたのか?暇な奴だな』なんて皮肉を言いながら垂れ目がちの眼を細め、片方だけ口角を上げ、強気に笑う様がなんと愛らしいこと。内容は基本的にランダムだが、相手によって固有科白もあり、丹楓に対する科白を引き出すために鍛造周回を数時間も続けてしまった。だが後悔はない。初期の割に強い武器も手に入ったし。

 そして、応星はプレイアブルでこそ無いが、ストーリーを進めると兵站を担当するキャラとして戦場に現れる。後方支援を担当する兵士も戦えはするものの、矢張り職人が多く、そのステージに入った際は嫌な予感がした。このゲームは特定のキャラが死亡するとバッドエンドに直行する悪い癖がある。

 応星を気にしながらも攻略を進めていれば、予想通り彼の居る陣が歩離人に奇襲されてしまったのだ。私の動かす丹楓は目の前の敵も何もかもかなぐり捨て、道中襲ってくる敵をちぎっては投げ、応星の元へと駆ける。
 しかし、些か距離があったため、駆けつけるまでに応星はどんどん追い込まれていく。金人を駆使し、どうにか耐えているようだが、応星の『こんなところで死んで堪るか』『最後まで貴様等の喉笛に食らいついてやる』『まだ、負けはしない……っ!』との壊滅寸前を表す切羽詰まった科白が流れた。
 駆けつけた頃には応星のHPは瀕死状態で、私の心は『絶対、ぎりぎり間に合うかどうかの距離になったら奇襲フラグ立つんだろこれ』『このステージに入る前に丹楓を集中育成してて良かった』と、憤りと安堵が交差して忙しい。買った初日にいきなりバッドエンドはちょっと寝込むくらいある。

 応星の救出を成功させ、片膝を突いて疲労困憊らしい応星に近寄るとムービーが流れた。
「お前が来てくれるって信じてたよ」
 掠れ気味の弱った声色。
 信頼した相手へと向ける縋るような表情。
 たったこれだけで、自分でも判るレベルで気持ち悪い笑顔になっていたが、丹楓は返す。
「其方の余の半身だ。危機を看過など出来ぬ」
 で、私は倒れた。
 これもう結婚してるだろ。
 SNSでは二人の親愛エピソードが流れる度に『もう結婚しろ』などと茶化す流れがあるのだが、半身呼びは結婚してるだろ。ゲーム特集で仙舟まで取材に行ったらしい裏話も見たし、どこで取材したんだ、この爆萌えエピソード。

 星神:龍の末裔であり持明族の長である丹楓と、仙舟では侮られ、見下され易い短命種の応星。この二人がどういった経緯で互いを親友とし、仲間として肩を並べるに至ったかは語られていないが、立場、種族、寿命の垣根を跳び越えての友誼。尊い。
 応星の弱った雰囲気も私のツボにどかどかと刺さりまくる。こりゃあ薄い本が厚くなるぞ。今度の同人イベントが楽しみ。いや、その前にもう一度、供給を浴びたい。

 来店する客を相手にしながらも、頭の中は例のシーンをもう一度浴びたいと脳内再生を繰り返す。
 皆が服よりも食事を優先し出すお昼頃。客も落ち付いてきたので私もSNSで推しカプ供給の悲鳴を眺めながら食事にしようかと考えていたら、
「あ、あの人めちゃくちゃ丹恒にそっくり!」
「はぁ……?あ、おい……」
 なんて声が聞こえてきた。
 振り返れば灰色の髪と黒服を着た少年と、黒髪で仙舟風の服を着た少年が二人。黒髪の少年が左肩に龍を象った仙舟のアクセサリーをつけているのを私は見逃さなかった。そして、友人らしい少年の言うとおり、涼しげな目元や落ち付いた雰囲気が丹楓様にそっくりで私の血圧は急上昇。倒れるかと思った。
「いらっしゃいませー」
 上っ面こそ冷静を装ってはみるが、声が震えている気がする。
「すげー、二相楽園に来て仙舟の人見ると思わなかったな-。人気なの?」
 灰色の髪をした少年は随分と人懐っこいのか、壁に貼られた丹楓の巨大ポスターを指さしながら物怖じせず私に話しかけてくる。
「はい、二相楽園では仙舟の歴史作品が大変好まれておりまして、こちらは約七百年前の持明族の龍尊、丹楓ですね」
「凄いじゃん、丹恒」
「俺には関係ない……」
 黒髪の少年は、どこか困ったようにポスターから眼を逸らしていた。
 丹楓は、仙舟に於いて禁忌である不死を求めて内乱を起こし、脱鱗の刑に処されたとされている。その事もあって、仙舟では未だに丹楓を崇拝する者、毛嫌いする者とはっきり二分されているのだとか。仙舟出身らしい彼は、残念ながら丹楓へ良い感情を持っていないようだ。
「えー、格好いいのに」
「はい、丹楓様はそれはそれはお強くて、龍脈の力によって癒やしの力まで持っていらして、人格者で素晴らしいお方なんですよ」
 黒髪の少年をちら見しながら、少しでもイメージを回復させようとプレゼンしてみるが、彼にはあまり響かないのか表情を変えないまま話を聞いている。
「へー、人格者だって。丹恒も優しいもんな」
 さっきから、この灰色髪の少年の言葉には違和感がある。
 まるで、丹恒少年と丹楓を同一視しているような口ぶりだ。
 幾らそっくりとは言え、いやいや。
「あっちの人は誰?刃ちゃんにそっくりだけど」
 じんちゃん。とは。
 灰色の少年が、丹楓と並べてある応星のポスターを指さしながら別人の名前を上げる。
 一つの惑星には、三人そっくりな人物が居ると言うから、似ている人が居ても不思議ではないが。
「彼は応星と言って、短命種ながら仙舟の工造司で一番偉い百冶の称号を得た凄い方なんです」
「へー……、そうなの?」
「まぁ、そうだな……」
 灰色の少年は私ではなく丹恒少年へと問いかけ、肯定されると無邪気に笑う。可愛らしい事だ。
「丹楓と応星は種族を越えて友誼を結んだ親友でして、コスプレもお友達同士でされる方が多いんですよ。良かったら如何ですか?販売もありますが、お試しレンタルも出来ますよ」
 丹楓への拒絶感を敢えて見ない振りをして勧めてみる。
 出来れば、この丹楓にそっくりな丹恒少年には是非とも衣装を着て欲しい。
「俺は……、別に着なくていい……」
 普通に断られてしまい、私は落胆する。
 絶対に似合うのになぁ。
「応星の服ってこの赤い服?」
「えぇ、彼が最初に鍛造技術を学んだとされる仙舟朱明の工造司の服です。華やかで焔を纏ったようなデザインが美しいでしょう?」
「へー、見たことないや」
 この少年は朱明ではない仙舟に良く観光にでも行っているのだろうか。
 随分と物知り顔だ。羨ましい。
「あれ、服屋さんなのに本も置いてるんだ?」
「あぁ、あれは、私の個人的な趣味と言いますか……」
 五騎士お勧め書籍。と、ポップをつけたコーナーを灰色の少年は目敏く見つけ、表紙の挿絵をしげしげと眺めている。二相楽園では良くある本だが、彼にとっては珍しいのだろう。
「これ買えるの?」
「いえ、置いてあるだけです。五騎士の布教をしたいので、個人的なお勧めを展示してます」
「へー、丹恒、本屋さん寄って買って帰る?」
「お前が欲しいなら好きにすると良い」
 丹恒少年は、肯定はしないものの否定もしない。
 自分の意見はさておき、他人の興味や好きを優先してくれる良い友達だなぁ。と、思う。
「ご興味がおありでしたら、先ずこれがお勧めです」
 応星が主役の露出が多い物を選んで勧めてみる。
 彼はどうにも傲慢で横柄な性格が大袈裟に書かれることが多く、酷いものだと『才能に溺れて長命種を見下す嫌な人間』のように描写されている事もある。仙舟は短命種を無意識に格下と見るきらいがあり、短命種でありながら頭目となった彼が気に食わない作者が多いのかも知れない。才能があろうと磨かなければ凡人、使わなければ無用の長物。それまでに血の滲むような努力や葛藤、歯を食いしばって耐えることだって合っただろうに、それを語る書籍は少ない。
 その少ない書籍の中でも自分の解釈に合う一冊を薦めて、興味を持って貰えたら一歩前進。これで応星推しになってくれたら万々歳である。
「どんなお話?」
「応星が作った奇物を駆使して敵を倒したり、問題を解決するような喜劇的なお話ですね。本格的な歴史物とは言い難いですが、入門編として読み易く初心者にお勧めです」
 こちらは少々面白可笑しく書き過ぎているのだが、初手から嫌な印象を抱かれるよりは良いだろう。五騎士に馴染みのない人へは大体、これからお勧めしている。
「昔はお助けマンみたいな感じだったの?」
「違う」
 私が否定する前に、丹恒少年が断じた。
 七百年も昔とは言っても仙舟出身であれば、ある程度は知っているのかも知れない。応星を傲慢で横柄な最低の人間。なんて言わないでくれ。目の前で推しを否定されたら泣いてしまいそうだ。
「彼は……、確かに多種多様な奇物を作る天才ではあったが、それはほんの一面に過ぎない。簡単に言うと一途すぎて……、目的のためなら自分すら蔑ろにしてしまったり、差別してくる長命種を相手どる為に強く振る舞ったりもしていた。だが、実際は真珠のように美しく高潔な魂を持った人で、親愛を抱いた相手には花が綻ぶように微笑んで甘えることだってある普通の人間だ」
 丹恒少年が急にべらべらと喋り出し、私は驚きに固まってしまった。
 随分と詳しい。仙舟の人間とは言え、こんなに応星を知っている人は稀ではないのか。しかも、高潔で美しい人だと言う。私は感激で泣きそうになって二の句が継げない。
「へぇ、丹恒の前世には甘えてたんだ?」
「え、あぁ、えっと……」
「持明族の卵って真珠みたいだし、それって持明族にとって最高の褒め言葉だったりする?」
「まぁ……」
 待ってくれ少年。彼の言葉をもっと聞かせてくれ。と、私は思ったが、聞き捨てならない科白だった。丹恒少年の前世。持明族とのキーワード。仙舟に住む人間で前世を明確に持つのは龍の末裔である持明族。
 かの一族は時期が来ると幼体に戻って転生を繰り返す種族であり、前回の生を便宜上、前世と呼ぶ。丹楓とそっくりで応星を知る持明族らしい男子。偶然だろうか?
 丹楓が獄に繋がれてからどの程度の期間入っていたのか。持明族の卵がどの程度で孵るのか私は知らないが、もしやこの少年は。
「刃ちゃんも、相変わらず一途だもんね」
「……ある意味な」
 何だか丹恒少年の目元や耳が赤くなっており、腕を組んだまま目を伏せて気不味そうにしている。つい勢いで捲し立ててしまった事を恥じたのか、もしくは応星を思いだして照れてしまったのか。
「お姉さん、本屋さんってどこにあるの?」
「えっと、向かいが本屋さんです」
 私は些か放心しながら、道路を跨いで向かい側にある本屋を指し示す。
 個人的な趣向は違うが、同じく五騎士を愛する店主が経営している本屋であるため、お勧めを訊かれれば真っ先に答える店である。

 少年達はきちんと横断歩道を渡り、向かいの店に入っていった。
 その後から、私は自分が何をしていたか記憶にない。

 気がついたら二階の自宅に居て、ゲームを起動してぼんやりと眺めていた。
 窓から階下を覗くときちんとシャッターは閉められており、習慣って凄いな。なんて感心した。
 テレビの前に戻ると、工房の中で放置していた筈が屋外に出て、丹楓と応星が二人で月を眺めながら酒を酌み交わしていた。

 おいおい、前作ではこんなスチル無かったぞ。どういう経緯でこうなったのか見逃した。シャッターなんて見に行ってる場合ではなかった。

 どうにか再現出来ないか、画面を切り替えて工房で丹楓を休憩させて放置を繰り返していると、
「今宵は満月らしい。共に酒杯を傾けるのはどうだ?」
 そう丹楓が応星に語りかけ、
「あぁ、それはいいな」
 と、返す。
 言葉が少なくとも互いに通じ合っているような雰囲気がとてつもなく萌えた。
 目を皿のようにして画面を眺めていれば、通常は二人が背中を向けたまま静かに酒を飲んでいる大した動きもない動画だが、時折アングルが正面に変わって二人の表情が見えた。互いを邪魔する者が居ない、差別して見下してくるような者も居ない。信頼する相手だけが居る空間で微笑みを交わす二人。
 ほぼ能面と言ってもいい丹楓の微笑みも破壊力が高いのだが、応星が、我が推しが、皮肉屋の面ばかりが強調される彼が愛おしむような、それこそ『花が綻ぶような』微笑みを丹楓に向けていたのだから五体投地とばかりに床に身を投げ出した。

 取材したスタッフと握手がしたい。
 なんなら、どうやってこの情報を手に入れたのか具に聞き出したい。
「最高かよ……」
 推しカプよ永遠なれ。などと祈りを捧げていれば、ふいに引っかかる物があった。
 永遠。丹楓は『不死』を求めて内乱を起こし、処罰されたとされているが、何をどうしようとしていたか外部には秘匿されている。仙舟は生命に関する研究その物が法で禁忌と定められてるため、そこは致し方ない。
 ただ、オタクたちの間でまことしやかに囁かれ、二次創作ではさも公式のように闊歩している解釈。『丹楓は応星を愛する余り、死を否定するため不老不死にしたのではないか』。
 これがもしも、真実だとすれば応星にそっくりな『じんちゃん』とやらは、名前を変えて今も生きている応星なのでは。一途な彼は、丹楓の後身である丹恒少年と今も交流を持っている?

 これは、同士各位に伝えるべきなのでは。
 私は勢い良く起き上がってスマートフォンを手に取り、SNSを開くものの、もう一人の私が私を殴りつける。

 丹楓の後身は今、二相楽園に居る。もしかしたら応星も居るかも知れない。わざわざ姿を変えているのだから、目立ちたいとは考えていないはずだ。そも、騒ぎ立てて推しに迷惑をかけるのは本意ではない。
 私はスマートフォンを伏せ、また大の字に転がる。

 本を作ろう。
 この思いの丈をそこで叫ぼう。

 そのまま、丹楓と応星がいちゃこらする妄想へと身を委ねた。

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