何も考えてない現パロ2
・#こじふおWeekお題。色味薄いですが『卒業』です
・いちゃつく楓応
・書きたい部分を書いた
・現パロで応星が高校生、刃が五歳児
・丹楓の口調を少し現代風に変えてます
・短い
幼稚園のお迎えから帰宅し、夕飯までの場繋ぎとしておやつを食べさせ、ソファーでうとうとする刃を応星は優しく撫でながら、薄く微笑んでいる。
その側では応星に新しい本を渡すために訪ねてきた丹楓が座っていた。
「お待たせー」
「問題ない」
応星が小声で丹楓へ語りかけ、音を立てないよう四つん這いのまま近づく。
彼にとっては見慣れた光景であり、慈母の如き応星を存分に眺められる至福の時間であるため、微塵も待った気はしなかった。
「人体がメインで載っている本だ。造形ではどこまで参考になるかは解らんが」
「ありがとなー。意味分かんないのも多いけど、読んでて結構面白い」
「喜んで貰えたなら何よりだ。必要なら解説しよう」
「おー、じゃあ気になったらメッセするな」
密やかに会話し、応星が丹楓に肩が触れるほど近くに座ると甘えるように肩に頭を乗せ、丹楓はそれを当然のように受け入れて髪を撫でる。
「いつも家に来て貰って悪いな」
「お前にとって、刃が一番の優先事項だろう。理解している。勉強も詰まったら言え」
丹楓は、長男として頑張っている応星を甘やかす唯一の存在でもある。
日頃から刃の世話を焼き、時間が空けば学業及び、将来の夢に必要な勉強を懸命にしているのだ。それを応援するならば兎も角、邪魔しようとは思わない。
「うん……」
多くは語らず、応星は撫でられる心地好さに目を細めながら身を委ね、どちらからともなく顔を寄せて唇を合わせる。
静かな空間に、小さな湿っぽい音を何度か響かせると丹楓が顔を逸らし、応星を宥めるように頬を撫でた。
「もうちょっと……」
応星は熱っぽく潤んだ目を丹楓に向け、頬に触れる手を握り締める。
「駄目だ。後はせめてお前が卒業してからだ」
「キスしてんなら同じじゃないか?」
丹楓が窘めれば応星が反論する。
そう言われてしまえば身も蓋もないが、丹楓は医学生の立場とは言え職業倫理に反するような真似は出来ず、安易に一線を越えてしまえば互いの将来が潰えてしまう可能性もある。一時の欲求に身を任せるべきではない。そう丹楓は説得する。
「もっと自分を大事にしろ」
「してるよー」
応星は不満を顕わにしながらも、それ以上は求めずに丹楓へと寄り添う。
丹楓も、時に理性が危うくなる時もあるが応星と刃が大体、一緒に居るのでどうにかなっている。応星の卒業、成人年齢まで約三年。反抗期になどならず、刃にお兄ちゃん子であってくれと自身のためにも願わずには居られない。
「もう一回だけ、駄目かな?」
再度応星に請われ、丹楓は困ったような表情を作るも、目元と唇に軽い口付けを落とす。
心頭滅却。と、頭の中で何度も反芻しながら。
「お茶でも淹れるよ」
「ありがとう」
名残惜しそうに応星が離れ、丹楓も白い髪を一撫でしながら膝に手を置く。
カウンターキッチンでお湯を沸かし始めた応星を眺め、しみじみとこんな関係になるとは。などと振り返ってみる。
元々、丹楓は他人に然程興味や関心を抱かず、請われて女性と付き合うこともあったが、余りにも素っ気なさ過ぎて直ぐに自然消滅。或いは『最低の男』の烙印を押されて振られていた。
それが五歳も年下の男を心から愛らしいと感じ、自ら他人に深入りするなど五年前の己に言っても信じなかっただろう。
奇縁と言う奴か。
言葉を美しく装飾するならば『運命』とやらか。
人生判らないものだ。
「何黄昏れてんだ」
緑茶を盆に載せて戻ってきた応星が丹楓の顔を覗き込みながら訪ねる。
「お前と出会えて良かったと考えていた」
正直に心を言葉にすれば、応星の顔がじわじわと赤くなる。
直球の言葉に弱いのか照れながら丹楓へ湯飲みを渡し、気持ちを紛らわそうとしたか自身の茶を慌てて飲もうと舌を火傷し、氷を取りに行く動揺ぶりも愛らしい。
思い返せば二人の出会いは約五年前である。
街中にある本屋へ参考書を買いに出た丹楓は、値段の高い医学書を買っていたためか店を出るや不良らしい輩二人に絡まれ、金品を強奪されそうになっていた。多くの店が建ち並ぶ街中で、昼間という事も在り周囲には多くの人間が行き交っていたが誰もが目を逸らし、いそいそと逃げる。
仕方ない。誰もが面倒事には関わりたくないものなのだから。さっさと金を渡して解放して貰おうと、丹楓が財布を出そうとすれば、声を上げる者があった。まだ背も低く、ランドセルを背負った子供の応星だった。『人を苛めたり物を盗ったら駄目なんだぞ』そう糾弾しながら果敢に挑むも、足を震えさせた挙げ句、爪も牙も持たぬ仔犬の如き威嚇など微塵も効果は無い。
高校生と小学生では体格も腕力も違い過ぎるが故に相手にもされず、当然のように蹴り飛ばされた。しかし、応星は諦めず、尚も立ち上がり挑もうとした瞬間、交渉が面倒になった丹楓が不良を打ち倒した。
丹楓は応星を肩に担いで直ぐにその場を去り、彼の自宅で手当を受ける間、ずっと涙ぐんでいた。助けるつもりが逆に助けらるような余りにも情けない構図が悔しくて仕方が無かったらしい。
「これに懲りたら、可笑しな連中に喧嘩を売らない事だ」
応星の手当を終え、無謀な事はしないよう忠告する丹楓だったが、
「でも、俺は強くならないといけないから、あんな奴に負けてたら話にならない」
そんな強い意志を感じる言葉に目を瞬かせた。
暢気に遊んで回っているような年齢で出てくる言葉ではない。
「ただの蛮勇ではなく、理由があっての行動か?」
子供特有の意味不明な万能感や未熟な正義感からの行動と考えていた丹楓は、応星の発言に少しばかり興味を引かれ、会話を促してしまった。
「弟が生まれたけど、みじゅくじとか言うのでちっちゃくて……、母さんも具合悪いし、俺が護ってやらないといけないんだ」
応星は勝手に溢れてくる涙を手の甲で拭いながら訥々と語る。
保育器の中で沢山の管をつけられた弟の姿。本当に己と同じ生き物なのか不思議に思うほど小さくて、でも父親に促されて手袋越しに触れてみれば確かな暖かさがあり、父の指よりも小さな手で応星の指を握ってきた時に確かな命を感じ、強くあらねば。この小さな弟を護らねば。と、決意したと。
未熟児で生まれたからとて、一生虚弱に生きるわけではないのだが、少年の決意に水を差すような真似は憚られ、丹楓は黙って悔し涙を流す応星の背中を撫でていた。
応星の涙が落ち付いた頃、
「決意は立派だが、暴力を振るうことばかりが強さではない。ただ、どうしてもやりたいのなら戦い方を覚えた方がいいな。威嚇は意味が無い。その重そうなランドセルで膝辺りを不意打ちで殴る方が余程、効果的だ」
虫も殺さぬような涼しげな顔をして、中々にえげつない戦法を伝授する丹楓に一瞬、驚いた表情を見せた応星は破顔し、腹を抱えて笑いだした。落ち込んでた所へ、意外性のありすぎる相手に出会って気が抜けたようだ。
「そんなに笑うような事を言っただろうか?」
「だって、ひょろっとしてるのに、あっという間にあいつらを倒したり、ランドセルでぶん殴れって……。人は見かけによらないって本当なんだなって」
鳴いた烏がもう笑う。とは言うが、子供の機嫌とは判らないものだ。
己が幼かった時分はどうだったか今一覚えてはいないが、こうやって泣いたり笑ったりした記憶は思い出せない。感情豊かで見ていて面白いとさえ感じた。
「怪我は特に痣にもなっていないようだし、骨も問題ないだろう。しかし、万が一と言う事がある。連絡先を渡しておくから違和感があれば連絡してくれ」
「解った。ありがとう」
どことなく縁が切れるを惜しみ、丹楓は初めて自ら連絡先を渡した。来なければ来ないでも構わない気持ちで。しかし、連絡が無くとも翌日には街中で邂逅し、お礼と言われてコンビニでお菓子を小学生に驕られてしまった。
それから懐かれて頻繁に会うようになり現在へ至る訳だが、人生とは判らないものだ。
「応星、おいで」
思い返していれば、じわじわと心の裡が擽ったい心地となり、応星を抱き締めたくなった丹楓が湯飲みを遠くに置いて手を広げる。
「子供扱いすんな」
とは言うものの、応星も素直に丹楓の腕の中に収まり、抱き締められて表情を崩す。
「俺が卒業したら覚えてろよ」
「いいや覚悟するのは、私ではなくお前だ」
くすくすと笑いながら、応星は悪態を吐く。
しかし、丹楓も負けてはおらず、応星の目を覗き込みながら言い返す。
「仮令、お前が私から逃げたくなったとしても、絶対に逃がさない」
殆ど脅しのようで、愛おしい相手を抱き締めながら囁く科白ではないが、
「もし、お前が逃げたら地の果てまで追いかけてやる」
応星も丹楓の頬に手を当てながら、十代の若者には似付かわしくない不敵な笑みを浮かべる。
実に似たもの同士である。
こんな、仕様も無いやり取りでも十分に満たされるが、後たった三年でこの関係がどう変わるのかは、未来の二人しか知らない。
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尚、余談となるが、ぼんやりとだが目を覚ました刃が二人が戯れている姿を見ており、
「にーは、なんでふーにーちゃとおくちくっつけてたの?」
との純粋に投げつけた疑問に対して応星は全身を真っ赤にしながら大層動揺し、誤魔化しも思いつかず蚊の泣くような声で『好きだから』そう、返したため、不穏な未来とはならないだろう。