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スターレイル用

なんも考えてない現パロ四

・一応出来てる楓応
・赤ん坊な丹恒
・丹恒に翻弄されまくる丹楓
・赤ん坊のお世話をしたい刃




 時間は休日の昼過ぎ。
 雨天の薄明かり差し込む一面硝子張りの窓。
 そこへ絶え間なく張り付いては滴る水滴。
 明るい店内には雨音に混じる静かな人のざわつき。
 四人がけの机とソファーに刃と応星が並んで座り、ぼんやりと待ち人を待っていた。

 応星をファミリーレストランへと呼び出したのは丹楓。
 助けてくれ。どうしていいか解らない。との助けを求めるメッセージ。
 場所と時間だけを指定し、応星からの返事は全く見ていないのか既読は付かない。
「ふうにいちゃこないねー」
「うーん、どうしたんだろうなぁ……」
 一応、親から貰った小遣いで頼める範囲のお子様プレートを頼み、刃に食べさせながら応星は丹楓を待った。

 能力が高く、何でも自己解決してしまうあの男が他者へ救いを求め、碌な確認もないまま事を進める様子から、相当な動揺ないし困惑や焦りが見て取れる。
 恐らくのっぴきならない事情があるのだろう。そう判断した応星は、電話をかけて余計な手をかけさせるような真似はせず、指定された場所へと刃を連れて移動した。

 指定の時間から約二十分の遅刻。電話やメッセージは未だない。
 丹楓と知り合ってから、今までこんな事は一切無かった。
 来る途中で何をか遭ったのか応星は徐々に不安になり、スマートフォンを取り出すと折良く雨で濡れた丹楓が小走りに駆け寄ってきて安堵する。
「すまない、遅くなった」
 謝罪を口にしながら対面へと座った丹楓の服装自体は簡素なカッターシャツにスラックスと革靴だが、手にもったジャケットで何かを包んでいるのか嫌にふっくらとしていた。
「どうしたんだ、急に」
 応星がスマートフォンをポケットにしまい、疲労の色が濃い丹楓へと語りかける。
「あぁ、こいつがな……」
 雨除けに被せて居たのだろう。
 ジャケットをずらすと如何にも不機嫌そうな赤子が姿を現す。
「おいおい、一体、誰に産ませたんだ?」
「弟だ。三年前に出来たと言っただろう」
 丹楓にそっくりな赤子を見て、応星が探りとも言えない直球な言葉を吐けば、即否定が入る。
 恋人に隠し子を疑われて眉間に皺を寄せ、反論しようとした丹楓だが、腕の中の赤子が唸りながら暴れようとし始めたために焦ってあやそうと試みるが一切の好転はないようだった。

 狼狽える丹楓から応星が赤子を奪い取り、
「おむつ替えたのお前か?」
 と、訊きながらソファーの上で手早く、だが丁寧にずれていたテープ式のおむつを履かせ直す。途端に顔を顰めていた赤子はすっきりしたとばかりに足を動かしつつも大人しくなる。
「流石だな……」
「弟君、なんか食わせた?」
「一応、棚に入っていた離乳食をやってみたが、昼は一口も食べようとしなくてな……」
 雨のせいではない若干濡れた毛先、ずれたおむつ、ぼたんが掛け違っている上にきちんと着せられていないロンパース。不慣れながら頑張ったのだろう痕跡は見えるが、赤子本人からすれば不快でしかない。大声で泣かなかったのは不慣れな世話の末、泣き疲れたのだろう事が赤くなった目元とぐったりした様子から察せられる。
「うーん、じゃあ野菜リゾットかなんか頼むか」
「ねー、おなまえは?」
 丹楓に赤子を返し、応星が慣れた様子でタッチパネルから赤ん坊でも食べられそうなメニューを注文していれば、赤子を熱心に眺めていた刃が口を開く。
「あぁ、丹恒だ」
「たんこ」
「こいつの世話をしてくれている雇い人が風邪で伏せってしまってな、ベビーシッターを頼もうにも今日は無理だと断られてしまったんだ……」
 ならば。と、奮闘はしてみたものの限界を感じ、最終的に応星を頼ったらしかった。
 丹楓の家は両親共に医師であり、父親は大病院の院長。母親はその病院で救急医と忙しい日々を送っており、丹楓自身も碌に顔を合わせたことが無い。とは応星も聞いていた。
「そう言う時は直ぐに相談しろ。なんでも独りでやろうとするな」
 注文した幼児用のリゾットが配膳され、気の利く店員が小さな匙と取り皿を置いて行ってくれた。
 丹楓は早速、匙でリゾットを掬い、赤子こと丹恒の背中を支えながら食べさせようとしたが、慌てて応星が腕を掴んで止める。
「ばっか、火傷するだろ。冷ませ!」
「お、あぁ、そうだな」
 丹楓が慎重に匙にとったリゾットを冷まそうと尽力し、十分に冷えただろう頃合いに差し出すが丹恒は口を閉じたまま顔を背けて食べようとしない。
「朝から食ってないのか?」
「朝は食べたが、ほんの一口二口程度だな。だから腹は減ってるはずなんだ……」
「思い当たる節は?」
「パンを投げたり、離乳食をひっくり返すものだから、少し無理矢理食べさせたらそれから……」
 有り勝ちではあるが、食べ遊びか嫌々に苛立ちを感じて兎に角、食べさせようとしたら断固拒否されてしまったようだった。それから離乳食をこぼして汚れた丹恒をどうにか風呂に入れたり、おむつを替え、着替えさせたりと大童だったことだろう。
「んじゃ、こ……」
「じんがやってあげる」
 応星が丹楓の苦労に思いを馳せながら交代しようとすると、いつの間にか通路に立っていた刃が丹楓の座るソファーへとよじ登ろうとしている。
「えっ……⁉」
 先程まで隣に居たはずの人が瞬間移動とばかりに移動したことに驚いて声を上げ、応星は本人と隣を何度も確認する。

 応星は通路側に座り、刃がうろうろしないように塞いでいたのだが、二人が丹恒に気を取られている間に机の下に潜り込んで抜け出したようだった。
「ふうにーちゃはにいちゃなのに、おせわできないのだめねー。じんがおてほんみせてあげる」
 目を輝かせながら意気揚々とソファーへよじ登り、呆然としている丹楓から匙を奪うと刃が顔を背ける丹恒の頭を小さな手で撫でる。
「たんこ、こっちみてー。あーってするの」
 丹恒が見慣れない刃へと視線を向け、口を開くように促されながら匙を差し出されると素直に口に含む。
「おいしいねー?もっとたべよー」
 己がどれ程、説得しても懇願しても食べなかった丹恒が、刃の手から素直に食べる様子に困惑と感動半分で丹楓は眺めるばかり。刃は上手くやった己が誇らしくて堪らないのか、ふすふすと鼻息が荒い。
 やっていることは全て自身が応星にして貰った経験からの真似事であるのだが、上手くいったことは喜ばしいものだ。
「お兄ちゃんが出来て偉いなー」
 刃がソファーから落ちないよう、支えるために移動した応星が褒め囃せば、より刃は得意げに丹恒へと食事を与える。
「じん、たんこよりにいちゃだから!」
「うん、偉い偉い」
 そんなやり取りをしていれば野菜リゾットはすっかりなくなり、丹楓に丹恒を縦抱きにしてゲップさせるよう応星が指示する。
「刃も戻ろうなー」
「うん」
 赤ん坊の世話に満足したらしい刃が応星の隣に戻り、腹が膨れて眠くなっている丹恒を嬉しそうに眺めていた。

「お前も何か食う?」
「あー、適当に注文してくれ……」
 やっと食事をして寝息を立てだした弟に心底、安堵した丹楓が気の抜けた返事をするばかり。
 常に背筋を伸ばして碌に表情を変えない兄をここまで振り回すとは、将来有望な弟だ。
「じゃあ、頑張った丹楓君にはお肉を頼んでやろう。金は出せんが」
「構わん。全部出すから、お前も何か食べるといい。」
 応星がやんちゃな丹恒に参っている丹楓を想像しながらパネルを弄り、その科白を待ってましたとばかりに自身の小遣いでは食べられそうにない料理の注文を入れる。
「じゃあ、飯の対価はこの後の労働で払うわ」
「家まで来てくれるのか?」
「そりゃ心配だしな?」
「すまない。本当に助かる……」
「使えるもんは親でも使えって言うだろ。頼れって」
 応星は表情をくしゃりと緩めて丹楓へと笑いかけ、丹恒の眠りを邪魔しない程度に小さく頷く彼を見て、より目を細める。

 心配は本心である。
 おむつ一つ碌につけてやれず、赤ん坊の機嫌の取り方すら解らないだろう丹楓が知らぬ間に共倒れでもしたら寝覚めも悪い。
 ただ、応星も不慣れの連続ですっかり悄気ている珍しさ、年上である丹楓に頼られるなど滅多にない現象に、喜びを感じて気分が盛り上がってしまっているのも事実だった。

 それぞれが食事を終えた頃には雨も上がり、車での移動中、丹楓の自宅に帰ってからも刃が良く丹恒をあやしてくれたお陰で終始機嫌が良かったため夜も平和に過ごせて兄達は胸を撫で下ろす。
 しかし、翌朝になって帰る頃には刃が丹恒を持って帰ると刃が放そうとせずにごねてしまい、丹恒も刃が気に入ったのか引き離すと泣き喚く。
 幼児と赤ん坊が戯れている姿は大変、愛らしく癒やされるものであったが、この結末には二人とも頭を抱えるしかなかった。

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