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スターレイル用

龍尊様は食べさせたい
・こじふおWeekのお弁当
・過保護丹楓
・不健康まっしぐらな応星
・出来てはいます




 応星は目の前に広げられた器を前に、なんとも言えない薄笑いを浮かべながら、着々と食事の準備をする高貴な人物を上目遣いに見やる。
「龍尊様が自らこのような事をされなくとも宜しいんじゃございませんかね?」
 慇懃なのか馴れ馴れしいのか、良く分からない言葉遣いで苦言を呈するように言えば、貴人、丹楓は涼やかな視線を応星にくれる。
「其方が飲食を疎かにして倒れなければ、余とてここまではせん」
「倒れてないってぇ……」
 工房へ食盒を持って押しかけ、共に食事をするぞ。と、宣言した龍尊は相手の胡乱な視線など物ともせず、茶器に茶を注ぎ、応星とは対面に置かれた椅子へ座った。

 四角の器の中には仲間全員の好物である蓮根餅、一口大で食べ易くされた肉饅、豚の角煮、焼売、魚のすり身揚げ、小分けにされた椀には薬膳粥が入っている。
 食べれば確実に美味しいと確信を持てる物だが。
「あんま食べ過ぎると眠く……」
「そもそも其方は不眠の気がある故、眠くなるなら素直に眠った方が良い。食後の仮眠は脳にも有効だ」
 渋る応星に箸を渡すと、丹楓自身も箸を手に取り、食事を始める。
 手始めに蓮根餅を頬張り、咀嚼し、呑み込むと固まっている応星をじ。と、眺めた。

 腹は空いている。
 今日も今朝から何も食べないまま作業に没頭していたのだから、この提供はありがたい物なのだが、丹楓の圧の強さに応星は若干食欲が失せていた。
「疾くと食さねば口に押し込むぞ。なんなら、全て砕いて胃に直接送り込んでやろうか?」
「解ったよ……」
 丹楓がこうする原因が己にある事実を加味すれば、従う他ない。
 甘辛く煮付けられた蓮根餅はしゃくしゃくとした食感と、柔らかい餅の歯切れ良さが病みつきになるような安定した美味さ。一口肉饅はほんのりと甘い皮に包まれた粗刻みの挽き肉と野菜が互いの旨味を引き立て合い、食べ始めれば一個二個と瞬く間に腹に消えていく。
 箸休めに粥を啜れば薄味ながらも出汁が効いて胃を温めながら落ち付かせてくれた。粥を半分ほど啜れば程良く満たされ、直ぐに作業を進めたい欲求が湧く。
「手が止まっておるぞ。茶も飲め」
「あ、うん……」
 粥をじっと見詰めているようでありながら、頭の中では別のことを考えているであろう応星を諫めるように声をかけ、丹楓が食事を促せば慌てて手を伸ばす。

 元から丹楓は口煩かったものの、ここまで過保護ではなかった。
 ただ、前述した通り、原因は応星自身である。時を遡って一ヶ月程前の事だ。
 小煩い丹楓が所用で玉殿に向かい、不在になったを好機として作業に没頭しすぎた応星は一週間もほぼ寝ず、食わずで工房の床でぐったり倒れていたところを弟子が発見し、気がつけば丹鼎司に運び込まれていた。
 本人にとっては『作業が終わって寝ていただけなのに』でしかなかったが、弟子曰く、呼吸は浅く、顔色も青白い、食事を差し入れてもたった一食を一日かけて食べるような有様。いつ寝ているかも怪しい。それが薄汚れた床に寝転んでいたのだから危機を感じても致し方ないものだった。
 実際、折良く戻ってきた丹楓の診察によれば、直ぐに意識障害を起こしても可笑しくない睡眠、水分、栄養不足の状態で、人間とは気力だけでここまで活動出来るものなのか。などと、頭を抱えた。

 幼子ではないのだから、食事を置いておけば勝手に食べるだろう。
 そんな希望的観測を捨て、誰かと共に食事をすることで強制的に食べさせる方法になるのは必然である。
「応星……」
「はぁい……」
 また手を止めて考え事をしている応星に食事を促し、丹楓は追加の茶を注ぐ。
 持明族の長に給仕をさせる短命種。その事実だけで龍師が泡を吹いて倒れそうな事実であるが、窘められようとも丹楓は止める気は一切無い。

 時間があれば食盒を持ち応星の工房へ向かう。
 己がどうしても手を離せない場合は誰かに持たせる。
 或いは最終手段として工房から拉致の如く連れ去る。
 応星の健康を護るために労は惜しまないつもりだった。
 己が半身とまで宣う存在を失うなど、考えたくもなかったのだ。
 このような労力など労力にもならない。作業をしたい応星にとって邪魔になろうとも。

 そんな丹楓の庇護を受ける応星も水分や栄養の補給に。と、少々浮腫が出るほど一日に何本も点滴を打たれ、口の中が痺れそうなくらい苦い薬を敢えて飲まされたが故に幾らかは反省している。
 反省はした。ただし、二度とやらない約束は絶対にしなかった。と、言うよりも出来なかった。

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