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スターレイル用

正体不明の奇物にご用心

・モブ視点
・機械に襲われる応星
・R18展開はありませんが、ほんのりセンシティブ
・嘔吐描写あり
・ちょっとだけモブ応な感じ



 ▇◇ー◈ー◇▇

「あれ、先生、なに持って帰ってきたんですか?」
 工房の掃除をしていたら、応星先生が機嫌良さそうに変な銀色の球体を抱えて帰ってきた。
 先生も『さぁ?』などと返すものだから、またか。と、察さざるを得ない。
「また正体不明の奇物を骨董市から買ってきたんですか?」
「偶に面白い掘り出し物があるんだよ」
 自分の頭の中だけでこねくり回したところで知らない者は出て来ない。未知の技術、人の作品も研究してこそ職人だ。とは、知識や技術に貪欲な応星先生らしい言葉である。
 だからこそ、先生はちょくちょく天外から持ち込まれた商品が多く陳列される骨董市に良く出かけられる。持って帰る物の大半は説明書すらない我楽多だ。しかし、そんなものからでも着想を得て、自身の技術に応用してしまうのだから、一留学生が腕一本で百冶に上り詰めただけはある。
 そこは素直に感心し、尊敬するべき部分なのだが、先生が奇物に夢中になると部屋から出て来なくなり、教えて貰いたいことだらけな新人の私は何をすれば良いのか解らなくなり困ってしまう上に、部屋にはどんどんばらした我楽多が溜まり、何が大事な物なのか。不要な物なのか。全く解らないので掃除も碌に出来ないのが悩み所だ。
「ちょっとこれをばらして見るから、作業部屋には来ないでくれ」
「解りました」
 先生はそう仰ってから奥の専用作業部屋に引っ込んだ。
 これは暫く部屋から出てくるまい。早々に諦めた私は以前教えて貰った作業を復習し、先輩に教えて貰いながら奇物の修理を懸命に熟していた。

 そうして気がついたら数時間。
 仕事が早めに終わった者は既に帰宅しているが、先生が作業部屋から出てきた気配はない。指示もない。いつもの事だが。
 もう工房を閉める時刻であるが、さて先生はどうなさるのか。どうせ泊まり込みなんだろうな。とは思いつつも訊ねに行く。
「先生、そろそろ入り口を閉め……、ひぇっ⁉」
 作業部屋の扉を開けると、とんでもない光景が目に入ってきた。
 蚯蚓のような触手状の器具に拘束され、腔内に触手の先端が入り込んで声も出せずに呻く先生。四本の触手相手に酷く抵抗したのか服は乱れて上は半裸状態。声は低く、獣のように唸りながら蠢く触手を拘束されながらも足で懸命に抑え込んでいた。
「わ、わ……!」
 私は慌てながら手近にあった試作品の剣を握り、触手を伸ばす物体へと思い切り殴りかかった。剣の心得などない私が剣を振ったところで、ただの棒きれで殴るのと変わらない。それでも流石先生の霊気が籠もった奇物と言おうか、先生を拘束する触手は難なく切れてしまった。
 拘束が解けた瞬間、先生は腔内に入り込んだ触手を掴んで引きずり出して床に叩き付け、足で押さえていた物は蹴り飛ばす。職人なれど、剣首様直々に鍛えて貰っているだけあり胆力が凄まじい。

 触手は陸に打ち上げられた魚のように暫くびたびたと蠢いていたが、次第に動きが鈍くなり、最終的に沈黙する。
「たす……、かった……。すまん……」
 先生が床に膝をつき、咳き込みながら私に礼を言う。
 締め上げられていたせいか先生の白い肌に赤い紐状の痕がついて痛々しく、首にも擦れた痕が認められて、さぞ苦しかったであろう。と、同情心が湧く。
 あれは天外の拷問器具か何かだろうか。人を拘束しながら腔内へ侵入し、内臓から食い破るような。

 あぁ、恐ろしい。どんな人非人であればそんな拷問を思いつくのだ。

「直ぐに丹鼎司に向かいましょう。お体が心配です」
「い、いや……、いい、大丈夫……」
 短命種は長命の天人と比べて病気に成り易く、たかが掠り傷とて完全に治りきるまで数日を要する。大丈夫なわけがない。あの拷問器具がどんな効果をもたらすのかも解らないのだから、きちんと検査をして貰うべきである。
 先生と懇意にされている、かの龍尊様であれば機巧鳥を飛ばせば直ぐに来て下さるだろうか。私が悩んでいれば先生が両手で口を押さえ、痙攣し出す。
 ほら、言わんこっちゃない。私は急いで上衣を脱ぎ、先生の作品群――書き散らして捨てた設計図も私には宝である――を護るべく口元へと差し出すと、先生はそこへと赤い液体を嘔吐した。

 すわ、吐血か。既に内臓を食い荒らされていたのか。吐瀉物に塗れた服を何もない廊下へと放り投げ、先生を抱えて丹鼎司に駆け込む決意をしていると、何かを破壊しながら進む音に身が竦む。
「応星⁉」
「りゅ、たったすけて、先生のお腹が!変なのが入り込んで!」
 何故か龍尊様が扉を破壊しながら工房へと飛び込んできて、私は縋る思いで状況を説明しようとするが、断片的な言葉しか出て来ず、ただ喚くばかりで何の説明にもなっていなかった。己が不甲斐ない。
「げ……」
 私が慌てている横で、先生が嫌そうな声を上げる。
 救いの主が来てくれて、なんでそんな声あげるんですか。
 いや、辛そうではあるが内臓食われてる割に元気だなこの人。
「何があった⁉」
 龍尊様は良くこの工房に来られるが、常に沈着冷静で声を荒げる姿など見た事も聞いたこともないのだが、明らかに動揺が顔に出て声色もいつもと違う。
「だいじょうぶ……、です……」
「吐いたんですから、そんな訳ないでしょう……」
 あからさまに酷い様相であるのに、悪さをして誤魔化そうとする子供のような真似をする先生へ、否定の言葉を投げれば龍尊様の視線が私へと注がれる。
「何があった?」
「私も良くは分からないのですが……」
 内臓が荒らされているのであれば、言葉すら喋れず、血を吐き続けているはず。そう考えると幾分冷静になれ、今見た物を龍尊様へと伝えると例の奇物へ向き直り、手に取られた。
「ふむ……、拘束器具……?」
 先生が持っていた際は一抱えほどの大きさの球体、今は中が開いているため触手がだら。と、垂れている歪な半円形の物体だ。何故、起動して先生を襲ったのか、寡聞な私では意味が分からなすぎる。
「この液体は?」
「あ……、さっき先生が吐いてた物でしょうか……」
 赤くどろっとした液体が切り落とした部分から漏れ出ており、先程からしていた妙に甘ったるく、胸が悪くなるような匂いの正体が知れる。
「応星、取りあえず胃の洗浄をするぞ」
 龍尊様が確認されている間、先生は蛞蝓の速度で這いながら逃げようとしていたが、小脇に抱えられたまま湯沸室へ連行される。心配で暫く廊下に立っていたが、酷く苦しそうな嘔吐する声が痛ましい。
 声が止まったかと思えば、涙目でぐったりした先生が龍尊様に抱えられて出てくる。
「吐いた物は……?」
「あ、私の服に包んで廊下に投げました。先生の作品を汚したくなかったので」
「そうか。検分のために例の奇物と共に持って行くが問題ないな?」
「勿論です。お掃除も戸締まりもしておきますのでお気兼ねなく」
 先生を肩に担ぎ、空いた手で先生の嘔吐物で汚れた私の服を持ちながら龍尾で奇物を抱えてのしのしと帰って行く。実に頼もしいお背中だ。

 姿が見えなくなるまで見送った後、胸を撫で下ろしながら、饐えた匂いのする湯沸室を掃除し、変な汁で汚れた部屋や廊下を掃除する。特別手当か何か貰えたら嬉しいなぁ。でも、先生は実力主義だから、雑用に有用性を見いだしてくれるのか。
 いや、強欲な考えは止めよう。別に才能も何もないのに先生に憧れて機巧の道に入り、弟子入り出来ただけも良いのかも知れない。来る者拒まず去る者追わずだから、弟子入り自体は難しくないところが泣けるが。

 認められるまで腕を磨かねば。そう思いつつ、龍尊様に破壊された扉をまんじりともせずに眺め、明日、先輩に手伝って貰おうと決意して私は帰宅した。

 ▇◇ー◈ー◇▇

 翌日、壊された扉や壁の事情を説明し、手の空いている先輩と共に修復している最中、三日ほど先生は工房へ来られないとの連絡があり、私はにわかに不安になる。
 医に精通し、龍脈によって他者を癒やす力を持つ龍尊様に診て貰って尚、回復されなかったのか。

 己が持っていた仕事を片付け、丹鼎司へ行って先生のお見舞いをしたい旨を伝えれば、対応してくれた持明の男性の顔が曇る。
「駄目とは言わないが……」
 腕を組み、解り易く困った様子で首を傾げる。
「先生は、そんなに容態が悪いのですか?」
 私が涙目になりながら問うと、いや?と、矢張り困ったような声と顔で答えられた。
 ぶるぶると体が勝手に震え、無言の帰宅をした先生を想像して涙が溢れそうになってしまう。
「あぁ、大丈夫、逆だ。死ぬ訳じゃない。龍尊様が診ておられるのだ。死にはしないが……、相当絞られたと言うか、強制的に休まされていて……、ほぼ寝台に縛り付けられているような状態だな。見舞っても良いが、側で龍尊様が見張られておる故、相当、居づらいぞ」
「あっ……」
 そもそも、先生はご自分を蔑ろにし過ぎな嫌いがある。
 碌に食事も取らないまま限界まで図面や機巧を作り続け、気絶するように床で寝入られるなど、先生の工房に在れば知らぬ者はない。だから、朋友である龍尊様が放っておけず、度々工房を訪れられるのだ。今回は不可解な機巧に襲われた事も踏まえて、余計に慎重になられてらっしゃるのだろう。

 お気持ちは重々理解出来る。
 かく言う私も、病気になり易い短命種の先生に、少しでも清潔な場所に居て欲しくて懸命に掃除し、ちょっと頭を打っただけでも死ぬらしい。と、聞いてからは転ばないよう床に落ちている物には人一倍神経質になった。龍尊様も、先生には無病息災で居て欲しいのだ。
「大事ないなら退散いたします……」
「それがいい。俺でも毛穴という毛穴から汗が噴き出るくらい怖かったんだ」
 一族の者がここまで言うのなら、相当、お怒りなのだろうか。
 他人が心配したとて、本人に改善する気が無ければ泥に灸。徒労となろう。
 関係性の浅い者であれば、困るのは本人なのだから勝手にせよ。とも言えるが、それでも放っておけないのは龍尊様が慈悲深く、それだけ先生を大事に想われていらっしゃるからなのだ。
 先生もそのお気持ちを汲んで、ご自身を大事にして下されば良いのだが。
「ではお邪魔しました」
「あぁ、龍尊様が許可すれば直ぐに戻られるだろう」
 許可、されるのだろうか。
 可笑しな奇物に苛まれながら、正体不明の液体を摂取させられたのだから、それは丹念な診察が行われているだろう。本当に三日くらいで戻ってこれるのだろうか。

 対応してくれた持明の男性に『先生を頼むぞ』の気持ちで何度も頭を下げながら家路についた。

 ▇◇ー◈ー◇▇

 三日経ち、私達で工房の修復を終えても先生は戻ってこない。
 様子伺いをしに行った者は、『まだ駄目だとさ』そう言われてすごすごと帰ってきたらしい。
 三日は先生の希望的観測だったか。

 雑用や私達でも出来そうな依頼を熟しながら先生の帰宅を待つ事一週間。
 ようやっと戻ってきた先生は良く休み、良く食べさせられたのか、大分血色が良くなっていた。
「服を駄目にしたり、汚いもんも片付けさせて悪かった」
 声をかけられ、血が沸き立つような心地になりながら全く気にしていない事を伝えれば、先生は疲れたように笑う。
「それで、あの奇物の正体は判明したのでしょうか?」
 好奇心が抑えられず、子細を問えば先生の頬がじわ。と、赤くなり、珍しく口籠もられた。
 いつもなら、打てば響くような会話をされるのに、余程、あの奇物が特殊な物で説明しづらい物だったのか。
「あれは、拷問器具だよ。麻痺毒を摂取させて、動けなくなったところを締め上げるような奴」
 私と目を合わせないようにしながら捲し立てられ、先生はそのまま作業部屋に籠もられてしまった。嫌な思いをした奇物の事を訊いたせいで、気分を害されてしまったのだろうか。

 まだ新人の私には大した仕事もなく、一週間もあれば大概の場所は綺麗にしてしまったのでやる事も無く、先輩にひっついて回るしかなくなり、その日は終わってしまった。

 ▇◇ー◈ー◇▇

 休暇を貰った私は、先生の真似をして骨董市を巡ってみる。
 先生のような目に遭いたくはないため、出来るだけ安全そうな物を見繕ってみる。が、あれとて一見して危険な拷問器具には見えなかった。
 あんな、つるっとした金属の玉がどうして人に危害を加えると思うか。それを考えれば、先生は運が悪かったとしか言いようがないのだろう。大きな怪我や病気を招かなかっただけ、不幸中の幸いなのだ。

「兄ちゃん職人さんかい?」
「はい。まだ駆け出しですが……」
「じゃあ、物はないんだけどこれとかどうだい?職人さんなら作れるんじゃないかな?」
 商人は愛想笑いをしながら、私に紙ペラを差し出す。
「なんかの解説書らしいんだがね、いい物だよ……」
 愛想笑いが嫌に下卑た笑いになり、口元を隠しながら囁くように語りかけてくる。
 私が作りたい物は、先生のような素晴らしい武器や機巧であって、下賎な品に興味はないのだが、完成図に些か見覚えがあって紙を広げてみる。

 所々虫食いや破れがあるため、作り方は完全に読み込めないものの完成品の使用例を見れば用途は一目瞭然。じわりと顔に熱が集まる。
「えっと、一応下さい」
「お、兄ちゃん好きだねぇ」
「違います……。」
 そうは言っても購入するのだから、変な目で見られても可笑しくない。
 畳んだ紙を隠すように懐に入れ、足早に帰宅すると我が家で一番広い机に広げて確認すれば、過激な自慰用の機械だと改めて理解する。

 見た目は球体の置物でしかないが、暫く人肌で温めると中から触手が現れ、自動で人の性感を部分を探り、刺激し出すらしい。

 中には行為中に痛みがないよう潤滑油を仕込めるらしく、あの赤い液体は一体いつ仕込まれた物なのか気になった。
 骨董市に流れたという事は、持ち主がいなくなって何ヶ月、否、数年経っていても可笑しくはないので、先生のお腹は別の意味で大丈夫だったのか。思い返せば腐った果物のような嫌な臭いがしていたので、最早、毒物とも言える物を飲まされたのではなかろうか。と、私まで具合が悪くなってきた。
 更に言えば、誰がどう使ったかも解らない不衛生かもしれない物だ。大事を取った龍尊様の偉大さに落涙を禁じ得ない。
 休暇明け、ささやかな慰めに先生の好物でも差し入れようか考える。

 ただ、真っ当な思考をしながらも、頭の片隅ではあられも無い姿で機械に犯され、快楽に流される先生の妄想が止まらず、あと少し扉を開けるのが遅ければ。などと考える自分をぶん殴った。

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