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スターレイル用

甘い毒を一粒

・R18
・カフカ同行クエ済み
・匂わせ程度に楓応
・殺伐としてます
・ちょいグロいかも
・流血あり
・1.2のストバレ?あります
・何かを抱っこしてないと寝れない⚔ちゃん(公式画像ネタ
※丹が蛇みたいなスリット持ち




 人気の無い惑星にて、星穹列車が整備のために停泊していたある日の事。
 深夜に乗車口を叩く者があり、パムが全身の毛を逆立ててヴェルトの背後に隠れ、なのかと穹が武器を構えた。

 そして、外で何か重いものが倒れる音がし、次いで列車の外装に破損が無いか確認をしていた姫子が顔を出し、
「この子、誰かの知り合い?」
 背を飾る赤い紐を掴まれ、血塗れで気絶をした長身の男性が姫子に引き摺られながら列車に入ってくる。
「やだー!知り合いってもんじゃ無いよー!ハンターだよ。それ⁉」
「あら、ほんと」
 なのかが悲鳴の如き声を上げて指摘すれば、引き摺っている男が、一度ホログラムで見た星核ハンターの刃である事に気がつくと、手を離して床に落とす。
「どうしようかしら。外に捨てとけば猛獣が食べてくれると思うけど」
 姫子が美しいかんばせを困った風に装いながら首を傾げる。
「か、カンパニーに連絡する?凄い懸賞金なんでしょ?」
「じゃなきゃ、仙舟に送るか?景元が刃を欲しがってただろ?」
 なのかは落ち着かずばたばたと手を動かしながら提案し、穹が目を覚まさない刃の頬を突きながら代案を出す。

「待ってくれ、そもそも彼は何故、列車の扉を叩いたんだ?」
「私が攻撃した時点でぼろぼろだったみたいだし、傷を負って助けを求めてきたんだとしたら、放り出すのも忍びないわね?」
 ヴェルトの当然の疑問を姫子が補足して皆で無言の協議。
 最善はカンパニーに送り、八十一億三千万なる莫大な懸賞金を受け取るか。
 もしくは仙舟に送り、羅浮将軍たる景元に恩を売るか。

 ただ、ハンター達はそれぞれに大事な『役割』を担い、エリオと契約しているため、勝手に排除してしまえば星穹列車は『運命の奴隷』の怒りを買うだろう。なれば見なかった事にして、この惑星に放置していくか。手厚く保護してハンター達と交渉し、条件次第で刃を返すか。

「なんでこいつがここに……」
 資料室に籠もっていた丹恒が騒ぎに気づいて駆けつけ、倒れている人物を見て目を丸くする。
 一瞬だけ、傷は油断させるための演技で、列車に居る自分を殺しに来たのかと考えたが、ならば丹恒が駆けつけて来た時点で体を起こし、殺意を向けてくるはず。
  目を閉じ、気絶したまま醜態を晒しているような男では無い。
「この男の処遇はどうするか話し合ったのか?」
「今、丁度それを話してたとこだよ」
 丹恒が訪ねれば、なのかが答え、穹が未だ刃の頬を突いたり摘まんで引いたりしているため止めさせる。

 一通り話を聞き、丹恒は一つ頷くと
「一番の無難はハンター連中に返す。だろうな。余計な交戦はするべきじゃない」
「あんたがそう言うなら良いわよ」
 姫子が珈琲を淹れながら同意し、ヴェルトも異論は無いようでソファーに腰を沈めた。
 なのかは刃が怖いのか、そわそわと落ち着かない様子で、穹はしゃがんだまま、相変わらず何を考えているのか解らない真顔で刃と丹恒を見詰めていた。
「ハンターが接触してくるか、刃が回復するまで俺が見張っていよう」
 丹恒が提案すれば、
「大丈夫か?」
 穹が心の内まで見透かすような視線で見詰めてくる。
 羅浮での出来事に加え、カフカから何を聞かされたものか、『大丈夫?』の一言には多くの意味が込められているようだった。
「大丈夫だ。刃が目を覚ましても俺なら制圧できる」
 丹恒は敢えてはぐらかし、刃を肩に担いで資料室へと戻ると部屋の隅に寝かせ、見下ろしながら、ぐ。と、唇を引き締めた。

 持明族は、確かに特殊な生態をしている。
 だが、魂が同一であれば前世の罪も負うべきだとするなら、もしも、刃や景元の前世が咎人であれば、知りもしない、今世でやってもいない罪を負い、罰を受けるのか。
 あり得ない。どこの世に、前世の罪を悔いて身を捧げる者が居るか。にも関わらず、誰も彼もが丹恒を『丹楓』と、『飲月』と咎人の名で呼び、前世の罪を糾弾し、憎悪を、殺意を向けてくるのだから気が狂いそうだった。

 撃雲を手に持ち、気絶している刃の喉元に当てる。
 首を裂いた程度では彼が死なないと、死しても蘇るとは嫌でも知っていたが、ハンター達が刃を迎えに来るまでの行動抑止にはなるだろう。呼吸を深く吸い、頸動脈に刃先を合わせ振り下ろそうとした瞬間、刃が呻きながら床を掻き毟り、ひゅう。と、苦しげな呼吸と共に瞼を開いた。
 めき、みし。と小さく聞こえるのは体組織が蠢き、修復されている音だ。皮膚や筋肉自体は気絶している間も少しずつ修復はされていたのだろうが、今は骨が強引に動き、元に戻ろうとしているのだろう。
 気絶から目覚めるほどの苦痛が刃を襲い、傍に丹恒が居る事にも気づかず藻掻き苦しんでいた。
「あ、はぁ……、ぐぅ……ぅ」
 刃が大柄な体躯を小さく丸め、涙を浮かせながら脂汗を流す。

 狂魔状態の刃しか見た事がなく、退けた後は直ぐに逃げていた丹恒は、体が修復される際、刃がこれほどの苦痛に苛まれているとは知らず、撃雲を持った手に力が籠もり、自身も呼吸が震えた。
 記憶が完全に戻っていない丹恒には預かり知らぬ所であるが、元々、短命種であった彼の体を作り替え、大事な存在を奪い、魔陰の身へと堕とし、刃へ永遠に終わらない苦痛を与えた丹楓の残酷さが垣間見えた。
 魔陰の身の発作も、カフカの存在と言霊がなければ、刃はとうの昔に発狂していただろう。

 体から軋む音が消え、ひゅー、ひゅー。と、喉から可笑しな音を出し、真っ青な顔色で震えながら刃が身を起こす。
「刃……」
 撃雲を握り締めながらも丹恒が声をかければ、刃は直ぐさま体制を整え、目を見開いて剣を探す。が、姫子に殴り倒された際に剣は回収され、今はラウンジに置かれている事を刃は知らない。
「飲月……」
「違う、俺は丹恒だ」
「違わない……、貴様は飲月だ」
 獣の唸り声のように、憎々し気に刃は吐き捨てる。
 景元の時と同じように、終わらない押し問答だ。とは言え、景元は最終的には改めてくれたのだが。
「お前は自分から助けを求めてここに来たんだ。保護される立場なら、もう少ししおらしくしたらどうだ」
 丹恒が撃雲の石突きを刃の胸先に突きつけ、高圧的に振る舞えば、悔しげに歯噛みする。

「あのー、救急箱を持ってきたんじゃが……、列車内で喧嘩は御法度じゃぞ?」
 二人の剣呑な空気に怯え、入り口で固まっていたパムが勇気を出して苦言を呈し、そっと救急箱を置いて逃げていく。

 気を削がれた二人が互いに睨み合いながらも、
「先ずその血を落とせ、浴室は奥の突き当たりだ。服も用意する」
 丹恒が折れ、他人の血か、自身の血か判別できないほど血生臭い刃の二の腕を掴み、浴室に放り込む。
「逃げようなんて思うなよ」
 刃は丹恒の言葉には応えず、若干ふらつく足でシャワー室へ入り、程なくして中から水を流す音が聞こえ出す。
 失血のせいなのか、或いは今は魔陰の発作が落ち着いているのか刃が暴走する様子はない。丹恒は溜息を吐くと、自身も刃の血がついた服を着替え、ラウンジへ赴き、ヴェルトの前に立った。
「ヴェルトさんすまないが、服を貸してくれないか。刃に渡す物だから出来る限り不要な物で」
 持明族の龍尊であった時代と違い、小柄ではないにしろ今の丹恒は刃よりも体躯が劣る。血を流せと言いながら、再び血液が染み込んだ衣服を纏わせる訳にもいかず、丹恒は体格の近いヴェルトに無心する事にした。
 ヴェルトは二つ返事で頷き、白いカッターシャツと、灰色のスラックスを丹恒に渡すと、
「君と彼との間に何があったか詳しくは知らないけれど、パムが悲しむような事だけはしないよう肝に命じておいてくれ」
 パムにも伝えられたが、ヴェルトからも改めて列車内で戦闘行為をやるな。と、諭され、丹恒は困り果てて呻る以外出来なかった。

 丹恒自身に戦闘意欲が無かったとしても、殺意を向けられれば応戦せざるを得ない。いつ狂乱状態に陥るか解らない刃がいつまで大人しくしているかなど確約などできはしないからだ。
「最善は尽くす」
 こう答える以外に無く、丹恒はヴェルトに頭を下げて浴室の前に戻り、脱衣所の扉を開ければ丁度出たのか、刃が髪や体から湯を滴らせながら立っていた。
「じろじろ見るな」
 棒立ちで居た丹恒に刃が手についていた水滴を飛ばし、苦情を申し立ててきた。
「あ、あぁ、すまない……」
 ヴェルトから借り受けた服を置き、丹恒は慌てて扉を閉める。
 凄まじい傷痕だらけの体。水滴を飛ばした手は、常ならば手袋や包帯で隠されているが、そこにも酷い傷があり、一目で二度とまともに動かないだろうと見て取れた。
「手……」

 いきなり高圧電流でも流されたかのように、丹恒の心臓が収縮を始め、血が逆流を始めたかのように痛む。
 何故、これほどまでに動揺するのか。
 今日の自分は何か可笑しい。

「邪魔だ……」
 扉の前に居た丹恒の臑を蹴り、刃は資料室に入っていく。
 丹恒の言葉が効いた訳でもないだろうが、本当にしおらしくなった刃に気味の悪さも感じ、監視も兼ねて後ろをついていけば、刃はパムが用意してくれた救急箱を開き、包帯を手に巻き始めた。
 包帯を巻く様子は実に手慣れている。いつも自分で巻いているのだろう。
「面白いか?」
「は?」
 刃が何を言いたかったのか考え、先程から矢鱈と見ていた事実に丹恒は気づく。
「監視だからな……」
「そうか」
 包帯を巻き終えた刃は立ち上がり、ラウンジへと向かう。
 そこには刃が流した血を掃除し終え、達成感に満ちた表情で道具を片付けているパム、窓を背にしたソファーの上で珈琲を飲む姫子が居た。姫子の傍らに、刃の剣がある。
「駄目よ。お仲間が迎えに来るまでは渡せないわ」
 剣に近づこうとした刃を牽制しながら姫子が微笑む。
 どこかカフカに似た雰囲気を感じ、刃が眉を下げれば姫子はころころと笑い、
「珈琲でもいかがかしら?」
 と、勧めてきた。
「ん……」
 姫子が淹れてくれた珈琲を刃が受け取ろうとすると、丹恒が手首を掴んで止める。
「あ、その、姫子さんの珈琲は素晴らしいが、今は、刺激が強すぎる……、から……、その……。もう寝る時間だし、なぁ……」
 丹恒の取り乱しように、ただの珈琲ではないと察した刃が手を引っ込めれば、残念ね。と、さして残念そうでもない声色と表情で姫子も珈琲を引っ込めてくれたため、刃に刺激を与えずに済んで安堵していれば、
「離せ」
 刃が丹恒の手を振りほどき、オーディオの前に居たパムに近づいておもむろに脇の下に手を入れ、持ち上げると、小さな体を抱き締める。
「救急箱助かった」
「お、おぉ、役に立ったようならなによりじゃ!」
 音楽に集中して人の接近に気づいていなかったパムは急に抱き上げられた事に驚いていたが、礼を言われた事で、嬉しそうにはにかみながら短い尻尾をぴこぴこと動かし、満更でもない様子だった。

 そして、刃はパムを抱きかかえたままオーディオの側に座り込むと、壁にもたれながら片膝を立て、小さく丸まった状態で目を閉じてしまう。
「の、のう?」
 パムが困惑と戸惑いを隠せない声色で話しかけるが、柔らかく背を叩かれていれば、次第にぷうぷうと寝息を立て始め、刃の腕の中で眠ってしまう。
「あらあら、子供をあやすのが上手なのかしら?じゃあ、私も休ませて貰うわ」
 遠目から見ていた姫子が声を潜めながら丹恒に告げ、刃の剣を持ってラウンジから消える。

 刃の監視役。
 その役目を全うするために丹恒も胡座を掻いて隣に座り、刃の腕の中でぐっすりと眠っているパムを覗き見て、複雑な心境となる。
 丹恒は、こんな穏やかな刃を見た記憶が無い。いつでも獣のような咆哮を上げ、石榴の瞳を殺意に滾らせながら襲いかかってくるのだ。最早、別人のようにしか感じない。今までの記憶を反芻しながら頭を混乱させつつ、ラウンジが自動消灯されるまで刃を見詰め続けていた。

 □■ーーーー■□

 消灯の後、いつの間にか眠ってしまっていたらしい丹恒が瞼を開けば、肩に重さを感じ、腕を何かに絡みとられている感覚に違和感を持つ。
 顔を動かせば、いつも使っているシャンプーの香りと滑らかな長い髪の感触がしたため、肩にもたれている人間が誰かを考える必要も無く、しっかりと抱き込まれている腕に当たる胸や、掌を合わせて絡められた長い指に奇妙な焦燥感が湧く。

 何をしているんだ。と、声を上げたくはなったが、これで大人しくしているのなら寧ろ行幸なのでは無いか。
 だが、これを誰かに見られたら、可笑しな誤解を受けそうな気もして丹恒は最早、眠るに眠れず、開拓者の能力を駆使してラウンジの明かりが点くまで起きていた。

 場が明るくなれば刃は自然と目を覚まし、なんの感慨もなく立ち上がると、目を擦りながらラウンジを離れ、丹恒は五分ほどして今起きた体で洗面所まで刃を追いかける。
「別に逃げては居ないぞ」
「分かっている……」
 つい先程まで、人の腕を抱き枕にして体にもたれていたとは思えないほど、なんの情緒も無く刃は冷めた目つきをしている。
 何故、全てに於いてこいつに振り回されなければいけないのか。理不尽に怒りが湧くが、丹恒が別の洗面台で顔を洗っていれば、ヴェルトがハンターからの通信を受け取った旨を教えてくれた。

「ごめんなさいねぇ?うちの子がご迷惑かけちゃって」
「とても大人しくて良い子だったわよ」
「でしょうね。うちはちゃぁんと躾けてるから」
 ホログラムのカフカと刃の剣を手にした姫子が、一体何の嫌み合戦なのか舌戦を繰り広げている場に赴けば、二人は刃と丹恒を見て傾国ばりの微笑みを浮かべる。
「ごめんね刃ちゃん、迎えに来るのが遅くなって、余計な怪我させちゃったわ」
「いや、別に良い」
 カフカが刃に人心を蕩けさせるような笑顔で謝るが、受ける本人は何も感じていないようで、単純な会話で終わらせている。
「そうね、あと……、二時間もすればそちらに迎えに行けると思うから、お外で待っていて貰っても良いかしら?ね?もう大丈夫だから」
「解った」
 カフカの命令は絶対なのか、刃は疑いもせず頷く。
「列車の皆様には、後日お礼をさせていただくわね」
 それだけを告げるとカフカは通信を切り、どこかぴりついていた姫子も一つ息を吐くといつもの慈母のような微笑みを浮かべた。
「じゃあ、剣も返さないとね」
「感謝する」
「あのな、お主の服、綺麗に洗濯して繕ってから資料室に置いといたのじゃが、気づいたか?」
 布に包まれた剣を姫子が渡し、昨日の出来事で警戒心が解けたのか、パムが側まで寄って告げれば、刃はパムと視線を合わせるように膝をついてしゃがみ込むと柔らかい頬を両手で包んで優しく撫でる。
「大変だったろう。ありがとう」
 その加減が絶妙なのか、パムはうっとりと目を閉じて口を半開きにさせて刃の手を受け入れ、離された後は名残惜しそうに自分で頬を触っていた。

「まだついてくるのか?」
 資料室に服を取りに行く刃の後ろを丹恒が歩いていれば、鬱陶しそうな視線と共に腹の立つ言葉を投げられ、いつもなら、お前が俺を追い回している癖に。と、顔が引き攣る。
「お、俺にはないのか?」
「なんだ?」
「礼くらい言ってもいいだろう!」
 資料室に入りながら、腹立ちの勢いで言えば、刃は心底意味が分からない。とでも言いたげに丹恒を見やる。
「貴様がしてたのは俺の監視であって……」
「傷ついたお前の護衛にもなってただろうが」
 自分自身でも、意味が分からなかったが、もう引っ込みがつかず腹の中で毒づきながら舌を打った。
「ふむ……、ありがとう、でいいか?」
 存外素直に礼を言った刃に、丹恒は余計に悔しさが増し、視線を逸らす。
「納得いってないようだな?」
 元々、求めていないもの。
 それを貰って納得も何も無いのだが、これ以上、口を開けば開くだけ墓穴を掘りそうで、気恥ずかしさに熱くなった顔を撫でて小さく。くそ。と、呟けば、刃が何を思ったか丹恒の前に跪き、ボトムのベルトを外しにかかってきた。
「なっ、何を⁉」
「貴様が一番気に入りそうな礼だ」

 これが?
 俺が一番気に入る?
 何を言っているのか解らない。

 丹恒の困惑を余所に、刃はボトムを下着ごとずらし、下生えに顔を埋めると持明族の特徴である股間の割れ目に舌を這わせ、中に埋まった性器を刺激する。
 興奮が昂ぶれば、長大な性器が割れ目の中から姿を現し、刃はそれを躊躇いなく喉奥まで呑み込み、舌で舐め、入り切らなかった根元を指で刺激する。
「んん、ぐ……」
 刃も苦しそうではあるが、頬を薄く染めて鼻にかかった声を漏らす。
 時に息継ぎに唇を放し、また咥え込む。
「相変わらず長いな……」
 中々達しない丹恒に刃は不満を漏らし、舌で懸命に奉仕する。
 再び咥え込んだ所で、刃が誰を思い浮かべながら咥えているのか気づいた丹恒が頭を掴み、激しく揺さぶれば、苦しさから刃の手が丹恒の服を掴む。

 次第に吐精感が込み上げて、丹恒が刃の腔内に精を吐き出し、それを刃は躊躇わず呑み込んだばかりか、性器の先端に口づけ、管に残っていたものまで吸い取る。
「これでいいか?」
 精に塗れた舌が赤くなった唇を舐め、丹恒はそれを凝視しながら荒く息を吐く。
 精を吐いても尚、屹立したままの性器。収まらない欲求を刃へと感じ、丹恒は目を回しそうだったが、
「まだか……、なんなら抱くか?」
 丹恒の状態を察した刃が、カッターシャツの釦を幾つか外し、肌を露わにする。
「お前っ……!」
 簡単に身を投げ出す刃に怒りまで湧いて、丹恒は資料室の堅い床に押し倒し、釦を引きちぎる勢いで衣服を剥ぎ取り、覆い被さった。
「好きにやれ」
 刃が面倒そうに言い放ち、抵抗もせずに床に倒れ込めば、艶のある黒髪が華のように広がり、白い肌を映えさせるばかりか、体に残る傷跡が、皮膚が薄いため薄紅色に色づき、丹恒の情緒を狂わせていった。

 □■ーーーー■□

 俺は。
 俺は……。
 なんて事を……。

 先程までの情事が無かったかのように、服を着替える刃を見て丹恒は呆然と座り込んでいた。
 上着を着た刃が顔を俯かせ、長い髪を服の中から両手で首筋を撫でるようにすくいだす様に、丹恒の心臓がどくどくと激しく脈打つ。

 こんな男が綺麗に見えるなんて。

 相手が誘って受け入れたからとて、敵を抱いた。
 最低過ぎる自身も到底受け入れがたいが、理性は微塵も動かなかった。
 押し倒した時点でも、刃があえかな声を漏らし、法悦の吐息を吐きながら足を絡めてきた際も、興奮するばかりで止まる選択肢が無かった。

「貴様、何を呆けている?」
「煩い……」
 片手で顔を覆いながら擦り、無様な自分が情けなくて仕方が無かった。
 これが戦闘なら、敵の策略にまんまと乗っかった阿呆で、死んでいても可笑しくない。
 己の馬鹿さ加減に頭を打ち付けて死にたくなったが、実行できるはずも無く、惨めさが積もっていくばかり。

 顔を覆っていた手を引かれ、丹恒は体を強ばらせたが、顔に近づいてきたのは剣の切っ先では無く刃の唇で、
「ふん……、次は殺すぞ」
 とだけ宣言して、刃は資料室を後にした。

 残された丹恒は床に転がり、列車の天井を眺める。
 刃は、宣言通り、次こそは丹恒を殺しにかかるだろう。

 今まで、何度も殺した。
 喉笛を裂き、心臓を貫いた。
 殺さねば殺されるから、必死で殺した。
 それが、こんな事で『殺したくない』などと巫山戯た感情が湧くなど。
「くそっ……!」
 先程までの刃の痴態ばかりが頭に浮かび、丹恒が床に拳を叩き付け、髪をぐしゃぐしゃに掻き回しながら毒吐く。

 丹楓が、背後で嗤っている気がして丹恒は余計に苛立ち、暴れたい心地になった。

 丹恒が資料室を飛び出し、ラウンジまで走る。
「あら、あんたどうしたの?刃ならもう出て行ったわよ……」
 ラウンジに居た皆が、酷い有様の丹恒を見て驚き、姫子が乗車口を指さし、刃が既に列車に居ない事を示したが、
「いえ、珈琲下さい……」
「あらあらあら、喜んで」
 皆からは逃げられてしまう珈琲を求められ、姫子は嬉しそうにマグカップに注ぎ入れ、丹恒に渡す。それを一気に飲み干し、丹恒は再度、マグカップを姫子に差し出した。
「あらぁ、そんなに美味しかった?」
 機嫌を良くした満面の笑みの姫子がなみなみと丹恒のマグカップに珈琲を注ぎ、これを五回ほど繰り返した所で丹恒が白目を向いて意識を飛ばす。

 あわよくば、今日の記憶が消える事を願いながら丹恒はラウンジの床に倒れ伏すのだった。

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