・R18
・甘えた龍尊様
・突っ込んだまま寝落ち龍尊
・いちゃいちゃしてるだけ
・ちょっとモブが応星に色々してる(手は出してない
豊穣の民、忌み物の征伐。
寿瘟禍祖の討伐を掲げる仙舟に於いては何よりも重要なもの。
自ら豊穣の民への攻撃を仕掛ける事もあれば襲撃を受け、救援を求める信号に応じる事もある。
この度も豊穣の民から攻撃を受けている惑星から救援信号を受け、丹楓が単身征伐に向かったまでは良かった。が、その救援信号自体が罠であり、救援対象は既に鹵獲された後。敵は歩離人のみならず、その長とも言える父狼、空を飛ぶ造翼者までもが待ち構えていた。
『敵は歩離人による少数の遊撃隊のみ』とする一方的な情報を鵜呑みにし、敵を甘く見た結果である。元帥は直ぐ様、剣首たる鏡流を救援部隊として送り、少ない兵のみを与えられた丹楓は味方を庇いながら戦い、苦戦しながらも奇跡的に敵を平らげはしたものの消耗激しく、羅浮へ戻った際も自らの足で立てていた事は彼の矜持から来る意地でしかなかった。
▇◇ー◈ー◇▇
「応星を呼べ」
宮へ帰り着いての丹楓の第一声。
問答無用の命令に、持明族の従者は工造司へ赴いて残業三昧であった応星を強引に引っ張り出して献上した。
拉致の如き有様で長である飲月君の機嫌を直す道具として扱われた応星の憤懣は溜まりに溜まっていたが、顔色も悪く、自身を抱き寄せて表情を緩める丹楓を見て何も言えなくなっていた。
「詳しい事情は知らんが……、寝ろ……」
「ん……」
応星も、丹楓が征伐に赴いた事は知っていたものの、詳しい戦況は聞かされていない。
従軍しているならば兎も角、離れた場所に居て聞こえてくるものは丹楓の威風堂々とした戦いぶりのみ。
この様子を鑑みるに、羅浮の龍尊であり、英雄でもある飲月君の苦戦報告などすれば士気が下がるとして民には伏せられていたのだろう。まして忌み物に騙されたなど広めるはずもない。兵にも箝口令が敷かれ、誰も戦場での苦境は語らず、疲労の溜息を吐くばかりが精々である。
「彼奴等は己の民をなんだと思っているのだ……」
兵士とは言え仙舟の民。命を軽く扱い、見栄のために情報を制限する仙舟上層部へ相当に辟易してしまったのだろう。余人が存在しない空間故の気の緩みに、丹楓が珍しく応星を抱き締めながら愚痴を零す。
仙舟に有益な奇物を齎す応星を、『百冶』という名の首輪を嵌めながら、権限は一切与えようとしなかった奴等のやりそうな事だ。と、疲労困憊の丹楓の頭を撫でながら思う。
そもそも、巡狩の星神である『嵐』事態が、己を信仰する民を忌み物『ごと』屠るような真似をするのだ。命、ないし人間を粗末に扱う事にかけては実にお似合いの神と神官達。きっと彼等の蜜月は仙舟が滅びるまで続くのだろう。
ともすれば、嵐は仙舟の民ですら『豊穣の化け物』と見なしている可能性もなきにしもあらずであるが。
「ほら、疲れてるんだろ。寝るまで側に居てやるから横になれ」
応星の首元に顔を埋め、徐々に口数が減りながらも起きていようとする丹楓を宥め、休むよう促すも頑なに横になろうとはしない。眠れば応星は直ぐに工房に戻ってしまい、己の唯一の安らぎが遠のくと考えているためだ。
その思考を知れば、応星は『そこまで無情ではない』とは文句を付けるだろう。内心、半々の確立でやりそうだ。そう自覚しながら。
「応星……」
「おい」
艶やかな声が耳元で名を呼び、唇が耳を食んでくる。
応星が丹楓の体を肘で押して距離を取ろうとしても、強い力で抱き竦められていれば抗いようもなく、どうにか避けようと首を曲げてはみるが、露わになった首筋に舌が這わされ背筋に得も言われぬ感覚が這い上がってくるばかり。
「丹楓、寝ろって……。起きるまで側に居てやってもいいから!」
精一杯の妥協を応星は口にするが、まるで耳を閉じているかのように丹楓は返事すらせずに体をまさぐってくる。
「丹楓?」
首を捻って返事をしない丹楓を見やれば目は閉じてしまっており、夢半ばで人の体を弄り回しているようだった。
応星の眉間には深い皺が刻まれ、ぴたぴたと平手で丹楓の頬を叩いてみる。
「む……」
刺激によって薄く目は開いたが焦点はあっておらず、完全に寝惚けている。
龍尊の寝惚けている姿など、貴重も貴重ではあるものの、今はそれを楽しむ余裕はなかった。実のところ、丹楓とは別の理由で応星も疲労困憊の状態なのだ。
「きちんと休め。な?」
「断る……」
「断るな。ほら、とりあえず横になれ」
どう見ても限界だ。
現状、お前の仕事は眠って体力を回復させる事だ。
説得を試みるも丹楓は応星の肩に顔を埋めたまま首を横に振る。
まるで、寝ぐずりする幼子のようで、それだけであれば微笑ましいような気分にもなるのだが、人の衣服に手を突っ込みながら胸を揉み、腿を撫で、あまつさえ陰部をまさぐる不埒な行為をどう窘めてくれようか。
「この……、馬鹿っ!」
罵倒しながら応星は丹楓の側頭部を自身の額で頭突く。
自身も損害は蒙るものの、動きが限りなく制限された中での反撃なのだから稚拙さはご愛敬。
「痛いではないか……」
衝撃によって流石に幾らか覚醒したと見え、丹楓が半眼で睨みながら頭突かれた頭を押さえている。
「いいから寝ろ。寂しん坊の龍尊様のために、添い寝くらいはしてやるから」
ぶっきら棒に嫌味まで口にしながら応星は丹楓を叱り飛ばし、しがみついてくる体を押し退けようと尽力するが、不満に口を曲げた我の強い龍尊によって寝台の中央に投げられてしまう。
「応星、会うのは久方ぶりであろう」
「そうだけど……」
丹楓が征伐に赴き、帰還するまで数ヶ月。
当然、逢瀬など叶うはずもない。
本来であれば、たった数ヶ月など長命種にとっては瞬きのような時間だが、一日千秋との言葉があるように、物理的な距離によって応星に会えない期間が丹楓にはあまりにも長く感じられていたのだ。
襲い来る敵を屠り、傷ついた者は癒やし、死したる者は弔い、戦の常道など通用しない相手との戦いは丹楓の精神を酷く疲弊させ、想いは募るばかり。これが数年、数十、数百と続く戦となれば、気が狂いそうなほどの心地であった。
「余はいつでも其方の事ばかりを考えていた。其方は余の事を考えはしなかったのか?」
丹楓が応星に覆い被さりながら想いの旨を些かぼんやりした声で語る率直な心を告げる科白に応星の体温が上昇し、触れてくる丹楓の手の冷たさも相まって肌が粟立っていく。
「そりゃ、俺だって……、あ、こら待て……!」
気恥ずかしさにどもる声色に丹楓が眼を細め、頬を撫でながら目元に口づけた。丹楓にとって、眠って休むよりも応星を愛でる方が優先らしく、手つきに遠慮は無い。
しかし、下肢に手を伸ばした丹楓が不意に手を止め、訝しむ声を上げる。
「応星……?」
「あー……、お前を『あやして』さっさと休ませてやれとな……」
応星は、工房にて煤けた姿で丹楓の帰還報告を聞き、安堵しながら呆けていた所を『龍尊様が貴様をお呼びだ』との下知と共に拉致された訳だが、作業で汚れきった姿がみすぼらしい。と、無遠慮な従者に押さえつけられながら口に出すのも憚られるような部分まで犬のように洗われた。更に髪は香油で整えられ、肌には乳液を塗りたくられ、粉をはたかれ、直ぐに丹楓を『あやせる』ようにされて今に至る
。
従者は気を利かせたつもりだろうが、独占欲の強い丹楓に知れたら間違いなく機嫌を損ねるのだから、宥め透かして穏便に済ませたかったが叶わなかった。
既に交合に至るための準備を済ませてある後孔を指先で撫で、丹楓は応星の予想通りちりちりと身の回りに厳つ霊を迸らせる。風呂を勧めるまでは良しとしても、その髪に、肌に、ましてや体の奥にまで手を触れ、準備をすませろ。などと命令した覚えはなかったのだから。
「嫌なら俺も眠いし、しなくてもいいだろ?」
「いや、する……」
余人が触れた体を厭うなら。との提案は一蹴され、丹楓の細い髪が身を巡る厳つ霊によって浮遊し、ゆら。と、うねって揺れる。その姿は憤怒に染まり、天で荒れ狂う龍神のようで、応星はこの激情をぶつけられるのは己なのか。緊張に生唾を呑み込んだ。
丹楓は応星に口付けて腔内を蹂躙し、離れれば唇を舐めながら息を吐く。
「全身、触られたのだな?」
「……う、うん」
丹楓は如何にも苛立たしげで服も煩わしいとばかりに床に投げ捨てると、応星の首筋に歯を立てて噛み付き、さも、他人が触れた部分を自らが上書きせねば気が済まぬとばかりに唇、舌、手で髪の一筋、足の先まで撫で回す。
それだけでも体温を高められ、応星は息を乱していると言うのに、後孔に指を挿入しながら弱い部分を刺激されれば応星の腰が跳ね、甘やかな声が意図せず零れ出す。
毎度、愛でるに執拗な丹楓ではあるが、余人に己の宝珠を好き勝手に扱われた悋気によって、今回はまた過剰になっている。外と内から同時に刺激される状況に応星は精を吐かずに達して脱力し、浅い呼吸をしながら天蓋の一部を見詰めていた。
「こちらを見ろ応星」
視線が己から離れた事が気に食わない丹楓が応星の頭を支えながら覗き込む。
蕩けた眼差しで応星は丹楓と視線を絡めれば眼が青白く光っており、興奮の具合が知れ、これはまた気絶するまで離して貰えなさそうだ。と、諦観と覚悟を決めていると、口づけられながら体内に長大なものが押し込まれ、応星は息を詰まらせる。
揺さぶられれば這い上がってくる悦楽と熱に翻弄されそうになり、応星は口を押さえて声を抑えようとするも丹楓が手を握り締め、指を絡めて寝台に縫い付けてくる。歯を食いしばったところで無駄な足掻きでしかなく、猥雑な水音と共に押し込まれれば声がひっくり返ったような嬌声が止められない。
最初は異物感しかなく、心地好いとも言えなかった交合が深く押し込まれては抜かれる律動に快楽を得てしまうようになったのはいつからだったか。その内、奥への刺激が無ければ達せなくなり、ただの性処理でしかない自慰でも勃たなくなり、体の深い部分へ丹楓を求めてしまう己が居た。
足を開いて背中に縋り付く。傍目には滑稽だろう姿も忘れるほど快楽に沈み込んでいけば丹楓が息を吐き、強く抱き竦めてくる。丹楓が達したのだと気づき、愛おしさが湧き出す理由は良く分からないが指通りの良い髪を撫で、抱き締め返すと幸福感に包まれる。
「丹楓?」
常ならば直ぐに体を起こして何かを言うか、じゃれ出す彼が一切動かなくなった事に不審を抱いて声をかけ、脱力しきった重い体を揺すってはみるが、返ってくるのは静かな呼吸音のみ。
ただでさえ限界だった状態で感情、肉体的に興奮して覚醒はしたものの、気が抜けると同時に意識が一気に眠りに引き込まれてしまったのだと推測されるが、応星の頭の中は『どうしよう』で一杯になる。
丹楓と褥に入れば体力が追いつかずにほぼ気絶するか、意識はあっても横抱きにされて風呂に連れて行かれるのだが、丹楓が眠ってしまっている以上、応星は何をしたらいいのか解らなくなっていた。
とりあえず、突っ込まれたままのものを抜きたいが、眠っているはずの丹楓はしっかりと応星の中衣を握り込んでおり、上手く体の下から抜け出せない。
「丹楓、一瞬でいいから起きてくれないか……」
当然ながら返事は返ってこず、つきかけた体力とぼやけた頭で応星は必死に考え、敷布を蹴りながら左右に体を揺らし、丹楓を仰向けに出来ないか尽力する。
そうなると、中に入ったものから刺激を受けて変な声が出てしまうが、そんなものを気にしている場合でもない。
「ちくしょう、気持ちよさそうに寝やがって……」
毎度、己が世話になっている事は棚に上げ、悪態を吐いてどうにか丹楓を仰向けにすると、握られた服が引かれて応星の上半身は剥き出しになる。
応星は肩で息をしながら目の前にある端正な顔を抓り、意味の無い腹癒せをして中衣から腕を出し、腹に収まる性器をゆっくりと抜いていくも、
「あぁ、くそ……、なんでまだ勃ってんだよ……」
ただ体内に収まっているだけであれば、体をずらすだけで抜けただろうが、既に腰が砕けている上に未だ屹立している丹楓の性器が弱い部分を引っ掻き、感じたくないのに感じてしまう浅ましい己の体にも腹立たしくなってくる。
「ゔー……」
応星が獣のように唸りながら力を振り絞り、どうにか抜けば、全力疾走でもした後のように疲弊していた。これ以上動くとなると、うっかり彼岸を覗いてしまいそうで、応星は丹楓の体を寝床に熱も冷めやらぬまま、目を閉じてしまった。
▇◇ー◈ー◇▇
体や髪に触れる刺激で目を覚ました応星が、ぼんやりと撫でられる心地好さを享受していれば頭上から聞こえた笑い声に寝惚けた顔を上げる。
「今日は仕事がどうとは言わないのか百冶殿」
「やらないといけない事は一通り終わってるから大丈夫だ……」
やりたい事はあるが、一日くらい休みにしても。と、考える程度には気は抜けきっている。
応星とても気がかりではあったのだ。
丹楓の実力であれば瞬く間に平らげて帰還するだろう。との予想は外れに外れ、一週間、一ヶ月、二ヶ月経っても英雄の帰還報告はなかった。よもや、何らかの不測の事態が起こったのか。そんな予感がしたとしても何も出来ないもどかしさ。
焦燥感が募り、丹楓と肩を並べて戦える鏡流や景元を羨んだ日とて何度もあった。しかし、応星に出来る事は武器や防具を作り、より強靱な金人を組み立てて送るが精々。
応星は決して短命種である己を言い訳に使う事は無いが、どれだけ鏡流や丹楓に鍛錬をして貰おうと種族差が明確になるばかりで実は結ばない。ならば、出来る事をやるしかない。となるのが応星で、不安をぶつけるように鍛造に没頭していた。
時間も忘れての作業。
限界に達すれば床に転がって仮眠。
碌に家にも帰らず作業し続けた手は荒れ放題で豆も潰れ、飲食も気がついた時に最低限に取る程度で体重も落ちていた。応星を詳しく知らない人間にはいつも通りに見えても、白珠辺りが見ていれば引き摺って監禁してでも休ませている程の惨状だったのだ。
今だけ怠惰になったとて、誰が応星を責められようか。
「また痩せたな。甘味を用意させよう。何がいい?」
丹楓は確認するような手つきで応星の体を撫で、体重の減少を指摘する。
そこまで顕著に体型が変わった訳でもなく、手に計測器でもついているのかとすら思う正確さに応星は舌を巻くが、言い出したとて今更。
「玉実鳥串……」
言及は避けて好きな甘味の要望を出し、睡魔に誘われて再び瞼を閉じようとすると体が反転し、背中に敷布の滑らかな感触が触れる。
「それはそれとして、途中で眠ってしまうなど無作法をして悪かった。其方が満足するまで奉仕してやろう」
ねっとりと太腿を撫でながら丹楓が幽艶な微笑みを浮かべ、応星は小さく体を跳ねさせつつも苦く笑う。
「龍尊様にご奉仕戴くなど畏れ多すぎてとても受け取れないな……」
昨夜が互いに中途半端だった自覚はあれど、応星の体は既に落ち着いており、断ってはみるがそれで止めるような丹楓ではない。
「なに、遠慮するな」
「遠慮ではなくてだな……っ」
我を押し通そうとする丹楓の体を押してもびくともせず、後孔に指が入り込んで言葉が止まる。
「まだ柔いな」
「そりゃ誰かさんが突っ込んだまま寝たからだ」
挿入されたまま寝落ちてはいないにしても、人の繊細な部分を弄って遊ぶ恋人を非難するような目つきで嫌味を言えば、丹楓は鼻を鳴らして笑う。
「そうかそうか、物足りなかったか。存分に愛でてやろうぞ」
仕様もない嫌味を『お前が寝たから俺は満足出来なかった』そう受け取ったような言い回しで丹楓は切り返す。
掘られた落とし穴を避けられなかったどころか、自ら深くしてしまった事に気づいて、もう眠れない事を悟った応星が息を吐くも、丹楓から頬に口付けを受けて表情を緩め、首に腕を回す。
「どうぞ、龍尊様のご随意のままに」
許可とほぼ同時に体内へ丹楓の剛直が押し込まれ、皮肉げに笑っていた応星は背を反らして引き攣った声を上げる。
外では小鳥が鳴いて朝を告げ、廊下には朝餉や龍尊の身支度を担当する家人が入室しかねて困っているだろうが、『貴様等が己の肉体を以てして龍尊をあやせ』と、したのだろうが。そう開き直って応星は無視している。
丹楓と応星は発散しきれなかった感情と欲を互いに貪り尽くし、彼等が寝所から出てきたのは昼も過ぎた頃。いつも通りに満足げな丹楓と、体力が尽きて横抱きにされ、ぐったりともたれ掛かる応星が浴室へ向かう姿があった。