・R18
・しつこいせっせする丹楓様
・ちょっとご奉仕頑張る応星
・持明雄にはスリットがあると思ってる
・捏造しか在りません
・闇堕ちしそうな丹楓様
応星は、自身が故郷を滅ぼされ、独り遺された憐れまれる立場、仙舟に於いて差別の対象として辛酸を舐めさせられた身として、何一つ知りもしない分際でありながら属性で語られる事、語る事を大変嫌う。
自らを善人に見せようとする口先ばかりの憐憫は煩わしく、本質を見ずに偏見、想像のみの勝手な断定でものを語る行為は思考の停止であり、なんら生産性がなく、得られるものがない愚かな行為と考えている。
そんな応星ではあるが、時折、長命種は。と、どうしても十把一絡げに考えてしまう場面がある。
先ず、一言で表すならば『悠長』。
無論、全てがそうとは言えないにしろ集団としての『特徴』『特性』、そう表現すればいいだろうか。
例を一つ上げるなら工房の同僚である。
これに関しては、特に迷惑は被っていないため口出しこそしないものの、応星なれば一日もかからず終わらせてしまう作業に何日もの時間を費やしている場面に遭遇するなど有り勝ちなのだ。彼等はそうするべきであるからそうしているのだろうと理解はすれども『丁寧』と表現すれば良く聞こえるが、悪く言えば『鈍重』になるのだ。
これには短命種が『性急』なのだ。と、揶揄される。
要するに、時間感覚の違いだ。龍の血族、仙舟人の一週間は短命種にとっての一日に相当するのだろう。否、下手をすれば一ヶ月くらいは感覚が違うかもしれない。
短命種の寿命が単純に考えて八十年程度だとすれば、数百年、否や千年以上は優に生きる種族なのだから致し方なくも思える。
短命種と長命種の時間感覚の違い。
それが応星にとっての目下の災難である。
「も、いい……」
「何故だ?まだ始めたばかりでは無いか」
応星は、丹楓の科白に異議を唱えたい心で一杯になるが、弾む息が、体中を蕩かすような悦楽が囀る邪魔をする。
「朝餉は滋養のあるものを出させようか。其方は食事を疎かにし過ぎだ」
丹楓が応星の首筋に口づけ、痕を残しながら苦言を呈するかのように語る。
食事を疎かにしがちな点は確かに反省するべきなのだが、だから体力が無い。そんな判断は誤りである。
丹楓と共に褥に入ってから、どのくらい時間が経ったのか。
応星にはもう、それが判らない。
「ぁ、は……っ、う゛ぅ……」
丹楓の長大な性器が体内で蠢けば、内側から溶け堕ちていくような感覚に身を震わせ、最早、応星の唇は懸命な呼吸と、呻き声を上げるのみの役割しか果たして居らず、与えられる快楽に翻弄されるばかり。
こうなると、丹楓に体を許すべきでは無かった。
そんな後悔が過る瞬間があった。
応星は丹楓を好いている。
だが、好いている事と、後悔は決して矛盾はしない。
上記で回りくどく述べた種族、感覚の違いが、後悔の起因である。
「あっ!あ、ん……ぅ、たん……、ふ……、まっ……ぁ……」
体内を深く抉られれば応星は腰を跳ねさせ、何度目かも判らない絶頂に達して丹楓の腕に爪を立てて引っ掻き、勝手に痙攣する体を落ち着かせようと痛みすら感じる喉で空気を肺一杯に吸い込もうとする。が、息を吸いきらない間に再び揺さぶられれば、ひっくり返ったような甲高い嬌声が、法悦の吐息が折角取り込んだものも吐き出してしまう。
酸素の行き渡らない体は気怠く、頭は白んで何も考えられず、これを繰り返されて意識を落とした回数など両手でも足りない。これを、応星の体力の問題とする丹楓も考えものだが、そもそもが只人である応星と、龍の末裔である丹楓。基礎が違いすぎるのだと、どう理解させたものかも応星の悩みである。
丹楓は全てを呑み込む水を操り、吼え哮る雷雲を呼び、たった一人でも敵の大軍を壊滅させるだけの能力を有している。
戦時であれば幾度も襲い来る敵を屠るために消耗もしようが、平時であれば持明の長としての仕事に忙殺され、体を動かすにしても軍事訓練が精々である。剣首たる鏡流と全力で渡り合えば或いは。だが、そんな機会は滅多になく、その有り余った体力を以て、じっくりと『丁寧』な前戯、愛撫、交合で応星を愛でれば今正に味わっている終わりのない快楽。
最早、暴力でしかない。
伝えなければ。
何度も考えては丹楓の愛おしむ手に、眼に、言葉に流されて後悔する羽目になるのだ。
「ぁ……」
不味い。と、感じる間もなく全ての感覚が瞬間的にぼやけ、不快感のある浮遊感と共に意識が暗転する。
目を覚ませば、性交など無かったかのような整えられた状態で目覚めるが、咄嗟に自分がどこに居るかすら認識出来ないぼやけた頭でも、体の気怠さで我が身に起こった事は理解出来た。
体は痛くない。丹楓が術で癒やしてくれたのだろう。
「たんふ……」
「うむ、朝餉にするか?」
視線を巡らして探すまでも無く、丹楓は応星の長く白い髪を指で弄びながら共寝をしていた。
今の内に伝えなければ。と、応星は焦る。これは早ければ早いほど好ましく、伝え損なえば、再び快楽地獄が到来する。
「あのな……、死ぬ……」
丹楓が眼を見開き、体を起こすと応星の脈を測りながら癒やしの術を使おうとするが、違う。と、応星がか細い声で手を掴めば、気遣わしげに眉を顰める。
「加減してくれ、まじで……、お前に抱かれると毎回、彼岸を覗いてる気分だ……」
応星が切々と現状を訴える。
彼にも性欲が無いとは決して言えない。
それでも、何時間もかけて体中を食らい尽くすが如く抱かれれば、淡泊な性欲など瞬く間に尽きてしまう。
「あの、一回くらいでいい……」
応星が羞恥に肌を赤らめながら懇願する。
丹楓はただでさえ一回一回が長く、そのたった一回の間ですら、応星は何度も絶頂して息も絶え絶えになるのだ。
最初こそ、好いているからこそ受け止めてやりたい。
そんな気持ちはあった。事前に懸命に奉仕をする事で回数が減らせないかと試行錯誤もした。しかし、丹楓は応星が健気で愛らしい行動をすればするほど興に乗るばかりで時間の短縮どころか回数すら減りもしない。
丹楓とて、腹上死をさせるなど望まないはずで、希望を持って頼み込むばかりである。
「ふむ……、体を癒やすだけでは足りぬか……?」
「それはありがたいんだけど、限度が……」
こうして話せているのも、丹楓の傷病を癒やす能力あってこそ。
でなければ、応星は疾うの昔に死しているだろう。
「あのさ、あんま言いたくないけど、俺はただの人間で、短命種なんだよ……。龍みたいな強さもないし、仙舟人みたいな頑丈さもない、年々体力も体も衰える。お前が俺を愛してくれてるのは嬉しいけど、本当に死んじまう……」
応星も、まだ三十代ではあるが、十代、二十代の頃と比べ、なんとなしに体の無理が利かなくなってきた自身を実感する事が間々あった。故に、丹楓との逢瀬、交合は由々しき問題であり、早急に改善しなければならないものである。
「善処しよう……」
丹楓が神妙な顔つきで応星の髪を撫でる。
矢張り、きちんと対話をすれば理解してくれるのだ。と、応星は胸を撫で下ろすのだった。
▇◇ー◈ー◇▇
愛されているのだろうな。
応星は丹楓宅の園林にて、杯を傾ける美丈夫の横顔を眺めながら、しみじみと考え、なんとも言えない心地になっていた。
例の懇願には、丹楓にも思う所があったのだろう。あの日から、丹楓は逢瀬の際に一切手を出さなくなった。口づけ程度はしても、微笑んで髪を撫で寝かしつけられた際は驚きから酔いが一気に覚めたほどだ。
丹楓の想いを受け入れてからは、邸宅を訪ね、酒杯を交わせば抱かれない日はなかったと応星は記憶してる。あれだけ欲求をぶつけてきた相手が、児戯のような戯れでのみで終わらせるなど、想像すらしていなかった。
応星は回数や時間、頻度を控えてくれればそれで良かったのだ。想定を超える丹楓の気遣いに『愛されている』との実感を得て、照れ臭い心地と同時に別の問題も湧き出してしまい、髪を撫でてくる手を受け入れ、応星は曖昧な笑みを浮かべる。
これも長命種の悠長さ故なのかは応星には判らない。
一言で言えば、『極端』。
前述の通り、応星にも性欲がない訳ではなく、触れ合いたい欲求とてある。
しかし、応星から求めた経験が無く、どうすればいいのか判らなくなって頭を悩ませている始末である。丹楓が強引な気質のため、任せっきりにしていたつけが回って来てしまった。
「もう酔ったのか?ならば宅まで送ろう」
ぼんやりと丹楓を見詰めていれば、酒器を置いて応星の手を取り立ち上がる。その立ち振る舞いが貴公子然として、応星はうっかり見惚れてしまう。
「立ち上がれない程か?」
「え、あ、えっと……」
応星が呆けていれば丹楓は気を揉んだのか横抱きにして自身の寝所へと連れて行く。
「どこか不快感があるのか?痛む場所はないか?」
寝台に腰を据えた丹楓の手が目元に触れ、頬を撫でる。
触れ方に如何わしさはない。体を心配して簡単な診察をしているだけなのは理解しながらも、脈をとるために頸へ触れた指に応星は身を震わせ、肌が粟立った。
「応星?」
「俺、あの……」
自身の頸に触れていた丹楓の手を両手で握り、応星は上目遣いに見やる。
言葉は中々口から出て来ず、応星は意を決して丹楓の指に唇を寄せ、口づけて自ら頬に触れさせる。
「丹楓……、俺から言い出しといて悪いんだけど……」
応星は生唾を呑み込み、頬を朱に染めながら聞こえるか聞こえないか程度の声量で、触って欲しい。と、丹楓に告げる。直接的な言葉も考えた。いい歳をして初心ぶるような真似もどうかとも思いはしても、羞恥が上回ってしまった。
「応星、触れるだけで良いのか?」
解っている癖に意地悪く目を細める様子に応星は歯噛みするが、自らが招いた事と覚悟を決め、丹楓の頸へと腕を回して口づける。
「愛らしい口づけだな」
触れるだけのものに対し、小馬鹿にしたような響きを以て丹楓が密やかに笑う。
煩い。と、応星は呟き、今まで丹楓がしてくれた事を脳裏に思い描きながら舌で唇を舐め、徐々に深くしていくも、どこか物足りなさを感じてしまう。息をも喰らい尽くすような、丹楓の口づけばかりが思い浮かび、全く応じてくれない自制心の固まりのような男への怒りすら湧いて唇に噛み付けば鉄臭い味が腔内に広がった。
「あ、ごめ……」
「構わぬ、其方が余をどうしたいのか、もっと教えてくれまいか……」
丹楓が自らの唇を舐め、更に笑みを深くする。
もしや、こいつは煩悶する俺を面白がっているのでは。などと考えもしたが、考えた所で丹楓を求めてしまう体は落ち着かない。
応星は丹楓を押し倒すと、普段の厳めしい服装ではなく、簡易な平服を纏っている丹楓の腰紐を外し、一見すれば、何もないように見える下生えに顔を埋め、下腹部についた割れ目に舌を押し込めば男性器の先端に触れ、それを刺激する事でどうにか興奮して貰おうと尽力する。
「あの、俺……、下手ぁ?」
丹楓と以外は恋愛すら碌な経験が無いのだから、技巧の善し悪しが応星に解るはずもなく、中々勃ち上がらない性器に焦れて訊く声は、羞恥、焦燥、悲哀と様々な感情がない交ぜになって、今にも泣き出しそうな声である。
「さて、なぁ……?」
実際の所、懸命な応星が愛らしく、楽しくて堪らない丹楓が、体内に流れる気を強引に押さえつけて耐えているに過ぎず、本来であれば既に応星を犯し尽くしている程の興奮を覚えてはいるが、表面上は余裕ぶってみせる。
これほど馬鹿馬鹿しい龍の力の使い道も中々ないだろう。
「次はどうする?」
「う……、どうして欲しい?」
予想がつきそうでつかない応星の行動に期待しながら、丹楓は上体を起こして背中を掌で撫で、
「そうさな……、其方の媚態を眺めていれば興奮するやも知れん」
などと嘯いてやる。
応星はそれを真に受け、耳まで肌を赤らめて落ち着かない。
「ぬ……、げばいい、か?」
「うむ」
当然ながら、丹楓に暴かれるばかりで自ら衣服を脱いだ経験が応星にはない。
それすらも慣れるまでは羞恥で頭が破裂しそうだったものを、丹楓が自身で衣服を脱ぎ、体を駆使して誘え。と、要求してきた。自ら始めたとは言え、最早、逃げだしてしまいたい程に応星の頭は煮え立っていた。
「ふむ、助力が必要か」
丹楓の声は弾んでおり、躊躇無く応星の腰紐を抜くと、合わせを引いて白い上半身を露出させる。何度見ても眼福である。と、丹楓が満悦していれば、緩慢な動きで応星が上衣を落とし、褲を止める紐に手を着けるが、固く結んで有るはずも無いのにもたもたと動きが拙い。
見れば哀れなほど体を強ばらせ、目に涙を薄く浮かべている応星が在り、苛め過ぎたと薄く笑いながらも丹楓は一応反省する。
「もう良い。無理をさせてすまなんだ」
「へ、あ、いいって……」
どう取り違えたのか、眉を下げる応星へと丹楓が口づけ、舌を押し込んで蹂躙してやればあっという間に眼を蕩けさせて呆ける。
褲も手早く脱がし、長い足の太腿の裏を撫でればこれから与えられる快楽への期待で腰が跳ねた。
「愛いの」
直接伝えれば、三十路も過ぎた男に何を。そう言って応星は笑い飛ばすが、愛いものは愛い。そも、三十年程度、千年を生きる龍にとっては赤子のようなものでしかない。愛いと表現して何の語弊があろうか。
逆説的に、貴様は赤子に手を出しているのか。などと無為な発想には蓋をする。
「応星……」
名を耳元で囁けば、小さく震える様に丹楓の下腹が熱くなり、応星の懸命な奉仕もあって気を抜けば一瞬で性器は凶悪な姿を現し、熱く舐めしゃぶってくれる肉を欲して涎を垂らしていた。
直ぐにでも体内へと押し込み、揺さぶってやりたい感情を抑えながら、丹楓は強ばった応星の体を撫で、口づけて解し、自身を受け入れられるよう後孔を濡らせば、丹楓の凶器の如き性器を受け入れ慣れた体は蜂蜜の如く甘い芳香を放ちながら溶けていく。
「たんふ……、はやく……」
辛抱も限界として、応星からの求める言葉に従い、ひくつく肉壁を押し広げながら丹楓が性器を奥へ奥へと沈めると、それだけで法悦の声を上げ、達したようだった。触れずとも芯を持っていた応星の性器は白濁した体液を流し、腹に独特な匂いの水溜まりを作って萎えている。
「心地好いか?」
「ぅん……、んっ……」
ゆるゆると腰を揺らめかせ、敏感になった肉壁を擦り上げていけば応星は返事なのか嬌声なのか判らない声を上げ、丹楓の逞しい体へ足や腕を絡めて縋り、全身で受け止めようとしてくれる愛らしさに興奮は留まる事を知らない。
それでも、丹楓は応星の懇願を思い返し、過剰に消耗させないよう一度で終わらせたのだが、予想外の事が起きた。気を飛ばさなかった応星が、寝台の上に座りながら熱の籠もった眼で見詰め、腹の上に跨がると丹楓の性器を自ら体内に収めて腰を揺らし出したのだ。
「ごめ、ん、もっとしたい」
動き自体は緩慢で拙いが、中々初心さが取れなかった応星が物足りない。と、啼きながら腹を撫でて快楽を追い求める姿は丹楓の心を愉悦で満たす。
「まっこと、其方は余を飽きさせぬ」
応星と出会ってから丹楓は新しいものばかりを知る。
煩わしい龍師を退け、ただ飲月君としての役割を全うするだけの無機質だった灰色の世界に色がつき、人口の街である羅浮にも四季に香りがある事を知り、ただ身体を維持するためだけに腹へと詰め込む食事に味がある事を知った。
酒とても、宴の席で嗜みはすれども、酔いもしない、碌な味も感じない己にとってはただの水と相違なく、好んで呑みなどしなかった。月を愛で、星を愛で、誰かと静かな時を過ごす楽しみ、種族ごと愛する博愛ではなく特定の個を愛おしむ情愛を教えてくれたのも応星である。
愛月撤灯ならぬ、愛星撤灯とでも言い表そうか。
この星を愛するためならば、他の何を犠牲にしても良いとすら思え、口にこそしないが、時に丹楓は応星を憐れむ。
龍尊からの寵愛を受けなければ、彼はいつか女を抱いて家庭を持ち、相応の幸せを享受しながら生を全うしただろう。その生に、このような辱めを受ける選択肢もなかっただろう。
ふ。と、丹楓は笑い、詮無い妄想を打ち消すと、懸命に体を揺らめかす応星の腰を掴み、浮いていた腰を深く押し込みながら口づけ、どこもかしこも蹂躙していく。
「応星、愛しておるぞ」
「う……、ん……」
悦楽に脳を浸された応星が、諾々と丹楓を受け入れる。
丹楓は唾液で濡れた唇を舐め、応星の汗を流す白い首筋へ獣のように噛み付き、愛咬の痕を幾つもつけていく。
この身も、心も喰らい尽くしてやりたい欲求。咬めば血が浮き、丹楓を甘く誘う。しかし、失いたくはないため、肉を食い千切りはしない。
愛おしい我が珠玉よ。
どれほど丹楓が応星を愛そうと、時は無情に生命を削って行く。それでも、丹楓は、応星を抱いた後悔などはしていない。
いつか、この者の命尽きる時、大罪人と成り果てようと放さぬ意志がある。