※丹楓を女性っぽく書きたい訳でもなく、逆でもないです。ただの生態のつもりで書いてます
・丹楓に悪戯する応星
・R18
・掌編
丹楓と恋人と成り、体も重ねて幾月年。
酒を呑んで同じ褥に入り、就寝するはずが、のそ。と、応星は身体を起こす。
「丹楓?」
隣で眠る恋人に、声を潜めて呼びかけても返事はない。
眠りを邪魔しない程度のぼんやりとした明かりの中で眠っていても端正な顔立ちが良く分かる。
仙舟を守護する五龍の一人で、殊戦闘に長けた一族の長。こんな綺麗で凄い男が俺の恋人なのか。しげしげと眺めながら事実確認をしていくと、人生とは解らんものだ。そんな悟ったような思考になる。
故郷が歩離人によって壊滅させられていなければ、恐らく両親の勧めるままに勉学に励み、就職し、気のあった相手と結婚して、それなりの幸せを享受しながら生きていたのではないだろうか。そんな予想図を描いてみるが、所詮過ぎ去った時。飽くまでも想像でしかなく、虚しくなるだけだった。
仙舟に来て直ぐは、ひたすら我武者羅で、己が誰かを好くなど考えた事もなかった。
かけがえのない存在が傍に居る。
愛して愛されて。今こそ、それなりに幸せなんだろう。
面倒事は多いが。
応星が寝息を立てる丹楓の額に唇を寄せ、持明族の特徴的な長い耳を突けば、ぴく。と、動く耳と目元。反応があると悪戯心が湧いて、頬や唇を突いてみる。
それでも起きない丹楓に、戦士たる彼がここまで気を抜いてくれている事実に愛おしさを感じながらも、応星の悪戯行動は大胆になって行く。
今日は断固として断った応星だが、毎度、褥の中では自分ばかりが乱されて、息も絶え絶えになり、凡人の体力もあっさり尽きてしまい、最後まで付き合って上げられた試しはなかった。
単純に、丹楓が極端に遅漏で、やる事なす事長ったらしいせいもある。俺だから付き合ってやってるんだぞ?などと、謎の高慢な思考をしながら唇から首筋をなぞり、胸を辿り、下腹へと手を潜り込ませる。
相手の手練手管に翻弄されるばかりが悔しかった事もあり、応星の手は丹楓の下着の中へと手を忍ばせ、中を探る。
丹楓の体が、所謂、仙舟人や、応星を含む人類と少々違っている事は知っている。
不朽の龍の末裔で在る為か、見目に男女差はあれど寿命が近づけば卵に還る特性故に子孫が成せず、男性体でも下半身が一見何もないように見えて、体内に男性器が収納されており、興奮すると、亀の首のようにぬる。と、出てくるのだ。
ただ、それをしっかりと見た記憶はない。挿入する頃には前戯によって、既にぐったりとしている事が多いからだ。応星は、丹楓の剛直によって体内を暴かれ、快楽のつるぼに堕とされているが、丹楓が気持ち良くなってくれているのかは今一解らない。勃起するのだから興奮はしている。が、興奮と快楽はまた別な気がするのだ。
そろ。と、粘膜を傷つけないように割れ目の中に指を入れれば、これが丹楓の性器として形になる皮なのだろうな。そう思える感触があった。体内から血が集まる事によって、内部にある突起が押し出され、男性器として出てくるのだろう。
元々、粘膜の保護のために湿った感触だったが、弄り回してれば先走りなのか、滑る感触があった。そろそろ潮時か。もっと詳しく見たいのなら、きちんと明かりがある場所でないと無理だろう。
「よし、寝よ」
丹楓にとって敏感な部分を散々に弄り回して好奇心を満足させた応星は指を抜き、手洗いに行くために寝台から降りようとすれば、腰を掴まれて引き戻される。
「あ、起き、たか……?」
「起きぬ訳がなかろう……」
思っていたより熟睡ではなかったのか、あるいは寝た振りだったのか。
「そ、だな……」
応星を寝台に引き戻し、覆い被さった丹楓の息は荒れており、やり過ぎたのだと察した。
悪戯をしながら下腹部ばかりを見て、顔は全く見ていなかったが、恐らく、相当我慢してくれていたのだろう。今、丹楓は歯噛みをしながら肩で息を吐き、爛々と光る眼で応星を見下ろしている。
「其方が、今日はせぬと言うから……」
「ごめん……、興味がちょっと……」
絞り出すような声で丹楓は応星を責める。
応星は、身を縮めて謝罪をする事しか出来ない。
「己が招いたのだ。覚悟せよ」
「あ、いや、まっ……、あぁっと、その、お手柔らかに……」
ほんの束の間、丹楓を止めようとした応星だったが、視線を下に落とせばすっかり臨戦態勢となったモノが視界に入り、自らが墓穴を掘ったのだから諦めるしかないと悟った。
▇◇ー◈ー◇▇
丹楓はかなり荒ぶっていた。
それでも、いきなり挿入などする事はなく応星の体を愛で、体を蕩かしていく。
丹楓が背後から応星に覆い被さりながら性器の先端を後孔へと当て、押し込んでいけば受け入れ慣れた体は、容易く飲み込み、先の快楽を期待して胎の奥が疼く。
「はっ、ぁ……ん、んっ……」
応星は腰を高く上げ、敷布を握り締めながら丹楓の律動に合わせて腰を揺らす。
性器を触られるよりも中を暴かれ、蹂躙される方が心地好いなどと、口が裂けても言えはしないが、丹楓も口にしないだけで反応から理解はしているのだろう、ゆったりと長大な性器を浅く抜き差しして、時に強く押し込んでくる。その刺激で応星は吐精せずとも達して、丹楓の性器をきつく締め付けた。
快楽で脳みそがドロドロに溶けて空っぽになり、丹楓の事しか考えられなくなっていく。
「たんふ、た……」
「なんだ?」
応星は喘ぎながら手を伸ばし、丹楓に抱きつきたいと懇願する。
そんな応星に蕩けるような笑みを浮かべ、丹楓が一度性器を抜いて抱き締め、口付けながら挿入すれば、長い手足が背や腰に絡みつき、腰を揺らして刺激を強請ってくる。
丹楓は望み通りに、応星に快楽を与え、愛おしさに満たされる充足感を味わって居た。が、
「お前は、俺抱いてて気持ちいい……、のか?」
唇が離れた際に、応星は小さく丹楓に訊ねる。
応星は己ばかりが喘いで乱れており、丹楓が達するまでに時間を要する事が気になって仕方なかった。
この体が余程具合が悪いのか、或いは丹楓が感じづらい体質なのか。しかし、応星の指が性器が収まっている部分を刺激した事で興奮したのなら、そこまで鈍感でもない気もして、意を決して訊いてみる。
「あぁ、悦いに決まっておろう。出来得るならば、このまま永遠に抱いていたいくらいだ」
永遠の言葉に、応星は今でも長いのに?と、絶句し、丹楓が満足出来ていない懸念が浮かんだ。
短命だ長命だ。応星が何より嫌う言葉ではあるが、種族としての違いは確実にある。短命種は豊穣、不朽の祝福を受けた長命種よりも怪我の治りも遅ければ体力もなく、かかる病気とて比類するまでもなく多い。増して、丹楓は形こそ人に近いが中身は違う。性感にしても応星とは感じ方が違う可能性もなきにしもあらず。
「丹楓、お前は、どうやったらもっと気持ちいい?」
「今のままでも十分だが?」
弾む息を整え、丹楓に訊ねるも彼に不満はないらしい。
ただ、与えられてばかりは応星の矜持が許さず、丹楓がより快楽を得てくれれば、体力の限界まで耐え、一々気を飛ばしてしまわずに済むのではないか。との打算もあった。
応星が丹楓の腕を引き、体を反転させて腹に乗り、自ら口づけて、いつも丹楓にされているように舌を入れ、寝台に手を突いて腰を揺らした。
己が翻弄さるのは、丹楓の好きにさせているからだ。自ら動いて、性器以外にも刺激を与えながらやれば性感を高められ、多少は早く達してくれるのではないか。そんな事を考えながらやっても息が続かず、自由になった丹楓の手が腰や背中を愛撫して邪魔をする。
腰を擽る悪戯な手を握り込み、寝台に押しつけながら応星は腰を揺らすが、丹楓は余裕の笑みを浮かべている。口付けの息の続かなさといい、丹楓の動じなさといい、圧倒的に経験が足りない事実が浮かび上がっただけであった。
「うー……、はやく、いけ……よ……」
「早々に終わらせるのが勿体ない光景故」
涙目で急かす応星に、丹楓は見上げながら戯れ言を吐く。
龍尊様は水だけでなく下半身まで操作出来るのか。などと下品な揶揄が浮かびはしたが、悪態を吐く余裕もない。
「早く終わりたいか、なら……」
再度、体を反転させられ、応星の背に布の感触がした瞬間、性器を一気に押し込まれて、喉奥から悲鳴が上がる。
「ひっ、あ、がっ……、あぁっ!」
目の前で火が爆ぜるように明滅し、丹楓の激しさに寝台が軋んで煩くがなり立てた。
応星の後孔をしとどに濡らした油と丹楓の先走りが混じってぐちゅぐちゅと音を立て、肌が触れ合う度、腰が快楽を請うように跳ね、体が勝手にくねる。ゆっくりと愛撫され、抱かれるものとは全く違う感覚に意識が飛びそうになるも、直ぐに引き戻されては喘ぎ、生理的に浮いた涙が溢れて肌を濡らす。
いつ終わるかも分からない中で丹楓の動きが止まり、身を震わせると応星の腹に精を注ぎ込み、息を吐く。普段よりは、早い気がする。とは思えど、もう既に応星の喉は枯れてしまっており、肌は汗みずくとなっている。これではどちらが良いかなど言えたモノではない。
「応星……」
名を呼び、丹楓の手が汗と涙でぐずぐずになった応星の顔を撫でる。
その手は優しく、ほんの束の間、応星の意識が微睡んで瞼が落ちかけたのだが、粘着質な音と共に、体内に収まっていたものが動いて目を見開いた。
「んっ……、おまっ……え……」
咎めるように出た掠れた声に丹楓は眼を細めただけで、ゆるゆると動かす腰は止めない。体内を擦り上げられれば応星の体は快楽を拾い、枯れた喉を更に痛めるように勝手に声が出る。
応星が咳き込み、ひゅ。と、可笑しな息を吐けば、丹楓が自らの手の上に小さな水球を作り、それを口に含むと口移しで与え、乾いていた喉はそれにむしゃぶりつく。
「もっと……」
水を欲した応星が求めれば丹楓は与えてくれたが、行為も止める気は微塵も無く、白い肌を撫で、腰を抱いて体内を掻き回していれば、動く度に甘ったるい声が応星の口から漏れ、啜り泣くような法悦の混じった嗚咽が絶えず寝所の中に響く。
丹楓が、二度目の精を応星に注いだ頃、寝所の小窓から薄く明かりが差し込み、朝が訪れたのだと知れた。
「たんふぅ、の、ばかぁ……」
「要らぬ真似をした己を恨め」
「うぅ……」
悪戯をした己が悪いとは自覚はありながらも、百杯返しとも言える仕打ちを恨みつつ、応星は心から後悔して二度と可笑しな好奇心を出さないと誓った。
▇◇ー◈ー◇▇
応星は気絶するような一眠りの後で朝湯を浴び、翌日の仕事は間に合ったものの、応星は明らかに寝不足で顔色も悪く、常ならば良く動くはずの口も呂律が回っておらず、歩く姿もふらふらとして正に死に体で、不調は明らかである。
「応星先生、また無理して徹夜されたんですか?もっとご自分のお体を大事にされて下さい」
「まぁ……、はは、気をつけるよ」
応星の持つ技術、創造力、情熱を慕ってくれる純粋な眼差しが痛いほど刺さり、曖昧な笑みを返して誤魔化す。
その傍らで、龍尊との関係を知は知ってる者は、今回の不調が自業自得と知らずとも、あれは余程。と、応星を慮り、いやに優しくしてくれたのだった。