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スターレイル用

禍い転じて福と成す

・頭空っぽにして読んでください
・既に付き合ってる現パロ恒刃
・嫉妬ぷんぷん丹恒
・R18
・若干、モブ刃あり


 丹恒は今、耐えられぬ憤懣を露わにしていた。
 理由は嫉妬である。それは自身でも理解はしているが抑えきれず、目の前に居る男で恋人の刃を睨み付け、歯噛みしながら獣の威嚇のように喉奥から唸り立てる。
 対して刃は丹恒が何を怒っているのかが解らず、困惑の表情を浮かべて椅子に座っていた。

「もう少し嫌がれ!」
 丹恒の怒声に刃は幾許か肩を震わせたものの、黙って見上げている。彼は元々物静かで口数も多くはない。
 子供の頃から特異な紅い眼を人から揶揄われたり、忌避された経験から人間嫌いで、眼事態が光に弱いせいか外にも出たがらない。故に、仕事はフリーランスでプログラムを書いて生活している。

 極力、人と関わらない生活ではあるものの、仕事をしている以上、対人関係はどうしても生まれる。それは致し方ないと丹恒とて理解はしているが、今日の取引相手の男は刃の仕事場であり、寝室でもある部屋にまでずかずかと入り込み、刃の説明を良く聞こうとする体で肩に手を置いて一々体に触っていた。
 刃は取引相手故に黙って耐え、丹恒は淹れ立ての珈琲を口実に引き剥がそうと尽力してみたりはしたが、蛙の面に小便と表現するか、暖簾に腕押しか、そいつは珈琲をリビングまで取りに行き、直ぐ様戻って刃から離れようとせず、仕事と関係ないような話まで持ち出して居座り続けた。

 稚拙な策は敢えなく失敗に終わり、せめてもの抵抗に刃の部屋の扉を全開にしていれば、男の下らない会話は恋人の有無に始まり、自慰はどうしているのか。や、恋人との夜の回数まで踏み込んだセクハラじみたものにまで発展して丹恒を苛立たせた。
 リビングから見える横顔は実に下卑た顔で笑っており、漏れ聞こえる声があまりにも耳障りで
「もう用事が終わったなら出て行ってくれませんか」
 などと、口を出してしまった。
 男は『怖い弟くんだねー』などと、矢張り嗤いながら刃の肩を一撫でして帰ったものだから、再び丹恒は全身の毛が逆立つような激情を感じた。
 
 それは、余計な接触を許す刃にも波及して、冒頭の科白を発してしまった訳だが、冷静になれば刃は我慢しているだけで、受け入れている訳ではないと理解出来る。が、相手もそう考えるとは限らない。はっきり嫌がらないから受け入れている。なんなら喜んでいるとまで考える輩も存在するのだ。
 刃が拒絶しないから相手が増長し、恋人なのに弟扱いされた事も丹恒の怒りに拍車をかけている。
「拒否しづらいなら最初から、俺が恋人と言えば良いだろう!」
 丹恒は再び吼え、怒りすぎて呼吸もままならなず肩で大きく息をする。
 幾ら軽薄な人物でも、恋人が睨み据える前では軽率な行いは控えるだろう。些か希望的観測も含まれるが。
「いや、そしたらあの人はお前にも絡むかも知れないだろう?彼は金払いは良いんだが、少々癖が悪い」
 己が黙って相手をしていれば、丹恒への被害は抑えられるとする自己犠牲精神は見上げたものだが、恋人が目の前で猥雑な扱いを受けている事を喜ぶ人間は稀だ。
「せめてリモートでやればいいだろう⁉」
「実物を見てからでないと納品させないと言うんだから仕方ないだろう……」
 セクハラ、否、痴漢行為をするためにわざわざ時間をかけて訪問するのだから、あれは筋金入りの好色漢なのだろう。恐らく、男も女も己が気に入れば手を出す輩だ。
「じゃあ、せめてパソコンをリビングに移して仕事しろ。寝室に入れるな」
 そうすれば、近くで見張っていられる上に気持ち悪い真似をするな。と、牽制出来る。丹恒が直ぐ隣のリビングを指差しながら興奮気味に言えば、
「集中出来ないし、眠い時に直ぐ横になれないのは嫌だ……」
 刃は嫌そうに眉根を寄せ、丹恒の発言を拒絶する。
 彼は常々声をかけても聞こえないほど集中してプログラムを書き上げ、限界が来たらふらふらとベッドまで行って眠る。それが癖になっている。体に悪いとは理解していても、些か不器用でタイピングが早くない刃は少しでも早く仕上げようと無理をしがちだ。
 譬え、場所をリビングに変えても、寝る場所がベッドからソファーに変わって身体的負担になり、かつ仕事の効率も落ちるとなれば確かに嫌がるだろう。

 丹恒はままならない状況に地団駄を踏みたい心地になりながらも『俺が養ってやるから会社とは取引せずに自分のアプリやアドオンだけ作ってろ』とは言えない己にまで腹が立ちだした。
 悲しいかな、丹恒はまだ学生で刃に世話になっている立場なのだ。

 丹恒の身分は、歴史学を専攻するしがない学生に過ぎない。
 アルバイトに従事したとしても、とてもではないが人一人を養えるような金は作れず、学費を払えば貯金すら出来ない有様。今住んでいるマンションとて刃が家賃を払っているから衣食住が確保出来ている。当然、我が儘を言えば『出て行け』と、言われそうだが、言わないのが刃の優しさだ。他人に深入りはしないまでも、根っこはお人好しで一度懐に入れた相手は放り出せない。丹恒が惚れた刃はそんな人間だった。

 丹恒は今でこそ悋気に駆られて捲し立てているが、本来は刃と変わらないほど幼い頃から無口で、感情の出し方が解らず、他人を喜ばせるような表情が上手く作れない子供だった。
 そんな丹恒を、親ですら可愛げが無い。としていたが、近所に住んでいた刃は独りぼっちだった丹恒を気にかけ、手を差し伸べてくれたのだ。単純に、家族と折り合いが悪く、暗くなっても独りで外をうろうろしていた子供を気遣っただけにしても、何の利害もなく己を受け入れてくれた存在は大きかった。
 思えば、その時に幼いながら彼に恋をしたのだろう。他人が珍しい、気味が悪いとする彼の瞳も、丹恒にとってはまるで宝石のようで、白皙の肌と烏羽色の髪に合っていてとても美しいと感じた。
 以降は何かにつけて刃にくっついて回り、刃も懐いてくる丹恒を可愛がった。数年後、その可愛い子供が恋を自覚した末に、性的興奮を伴って押し倒してくるとは夢にも思わず。

 六つも年上の刃は先に社会人となり、一時は離れてしまったが、丹恒が大学生になった折りに一人暮らしを始めた彼を追って押しかけ、距離を取れば熱に浮かされた頭も冷えるだろう。と、考えていた刃も、丹恒の執念と執着には諸手を挙げて降参し、今に至る。

「そう頻繁に顔を合わせる訳じゃない。気になるならあの人が来る時は丹恒が居ない日にするから……」
「それだと余計に何するか解らんだろうが⁉」
 今日はお客さんが来るから。そう今朝方、刃に言われて嫌な予感がした丹恒は大学が休みだと嘘を吐いて見張っていた訳で、人目あっても不埒な真似をする輩が好みの相手と二人切りになった場合、接触だけで済ませるのか。流石に行きすぎれば拒絶する可能性もあったが、一方的に迫る丹恒を受け入れた前科があるだけに信頼度は低い。
 己が押し倒して迫った分際で随分な偏見ではあるものの、懐が深いと言えば聞こえが良いが、自尊心が低く自身を尊重しない刃の性格を心配しているのだ。
「考えすぎだ、俺なんかに……」

 ほらでた。

 丹恒は苦虫を噛み潰したような表情になり、目元を覆った。
 刃の見目は非常に整っているのだが、周囲の老若男女から外見を忌まれた経験がある故に自身が映る物を嫌い、映った姿からは視線を逸らし、洗面所の鏡すら外している。丹恒がどれだけ可愛い、美しいと伝えても『そんな筈はない』『眼が腐ってるな』などと頑なだ。
「そんなに怒る事はないだろう、あの人も本気でやってる訳じゃない」
「だから……!」
 椅子から立ち上がり、頭を撫でながら大人として諫める刃に意図が伝わらない歯がゆさに、丹恒は神経が逆撫でされるばかりで一向に落ち着けない。
 丹恒は刃の腕を掴み、どうやったら今の感情が伝わるのか懸命に考えるが、言葉の知識はあれど表現方法が解らず、もどかしさに力を込めて詰め寄れば刃が体制を崩してベッドに倒れ込む。

 その瞬間、異様な破壊音と共にベッドの形が歪み、刃と丹恒は二人して硬直した。
「丹恒……」
「あ、えっと……」
 刃の珍しい怒気の籠もった声に丹恒は怯み、動揺から掴んだ腕を放す。
 開放された刃はベッドマットを捲り、底板が真っ二つに折れている事を確認すると眉間に皺を寄せ、丹恒を睨め上げる。
「すまない……、絶対弁償するから、少し待っててくれ」
 身長が一八五センチほどある体躯をゆったりと包み込めるベッドは決して安価ではなく、直ぐに買い直す約束が出来ずに丹恒の意気は瞬く間に消沈してしまった。
「構わん……。自分で買い直す」
 処分にかかる費用と再購入するための余計な手間を考えると頭痛がしてきた刃だったが、既にマットが草臥れていた事実は伏せ、面倒な理屈で怒っていた丹恒がすっかり悄気て大人しくなったのだから、『まぁいいか』で済ませた。

 ▇◇ー◈ー◇▇

 その夜はベッドの事が申し訳なくて堪らない丹恒が腕を振るって食事を作ってくれ、納品も終わって気軽になった刃はそれなりに機嫌は良かった。
「俺のベッド使っていいから……」
 常に背筋を伸ばしている丹恒が、今ばかりは背中を丸めて気不味そうに上目遣いに見てくるため、正直、愉快で仕方が無い。
「そうする」
 丹恒お手製のハンバーグを口に入れながら、刃は遠慮などせずに頷く。

 風呂も終え、髪も乾かした刃が丹恒の部屋に入ると、いそいそと出て行こうとしたため腕を掴んで止める。
「一緒に寝ないのか?」
「え、あ……、うん……」
 刃が薄く笑いながらの申し出に丹恒は素直に従い、ベッドに入ると背中を向けながら壁際に寄る。
「つまらん奴だな」
「え?」
 家で仕事をする刃はプライベートとの境目が曖昧になりがちであり、疲労が溜まった際、唯一、完全に仕事から解放され、憩いの場とも言えるベッドを破壊した申し訳なさから完全に心が萎えていたのだが、刃が服を脱ぎながら自身に跨がって来たため、若い精力は兆しを見せる。
「溜まってて苛々してたんじゃないのか?」
「それは違う……」
 根本的な問題をさっぱり理解してない刃に心底、滅入りはしたものの、下腹部に感じる肉厚な臀部の感触に体温は上がっていく。

 上に乗っただけで刺激も与えていないのに、堅さを増して主張してきた男性器に刃は鼻で笑い、『こんなのの何が良いんだか』などと考えながらも口付け、自ら受け入れる準備を済ませた後孔に迎え入れる。
「ん……」
 自身の狭い体内に、丹恒の顔に似合わず長大な性器を受け入れ、刃が吐息を漏らしながら腰を揺らせば怒りとはまた違う、顔を赤らめて耐える表情が可愛いと感じる。
 プログラマーを生業としながらも、刃は一人で黙々とやれて気晴らしにもなる筋肉トレーニングは好んでおり、体躯はだらしなさなど微塵もなく、寧ろ腰を揺らす度に振動に合わせて張った胸もたわんで丹恒を興奮させる。
 丹恒が悦ぶように艶めかしく動く腰と締め付けてくる肉壁に刺激されて昂ぶり、体内に精を吐き出す。

 吐く息は荒く、上体を起こした丹恒は刃の豊満な肉体に飛びつくように押し倒し、収まらない情欲をぶつける。
 刃はあえかな声を零して喘ぎ、彼自身の性器は萎えているが、突き上げられる度に勢いのない精を垂れ流す。刃が体を強ばらせ、大きく息を吸い込み、丹恒の腕に爪を立てて背を反らし、次いで弛緩する。
 寝室の明かりに照らされた紅の瞳は潤んで蕩けながらどこも見ておらず、達した事を知らせているが、丹恒は容赦なく性器で敏感になった肉癖を抉り、肉感的な胸を掴んで刃を悶えさせる。

 ベッドを激しく軋ませながら丹恒は刃の体を貪り、二度目の吐精で
「まだするのか?」
 と、刃が眠そうな眼で訊ねてきたため、その日はそのまま眠った。

 問題は、また翌日。
 当然ながら、刃のベッドは壊れているため夜は必然的に丹恒のベッドへ潜り込んでくる。
 丹恒のベッドは然程大きくはなく、一人用に体格の良い人間が入ってくるのだから狭くなり、どう足掻いても密着する。
 まだ十代で旺盛な丹恒は堪らず腰に腕を回し『いいか?』と、許可を求めれば刃は眠そうに眼を瞬かせながらも抱き寄せてくれ、楽しい一夜を過ごす。

 日を空けつつも新しいベッドが来るまでの間、丹恒は至福を味わっていた。

 ▇◇ー◈ー◇▇

 ベッドが壊れてから二週間。
 丹恒を大学に送り出した刃はパソコン前に座って作業に戻り、程なくしてやって来た来客を迎える。
 例の取引先の男であるが、扉を開けた瞬間、驚いたような容貌となり、刃は内心首を傾げた。
「刃チャンはいつも正確で仕事が早くて助かるよ-」
「恐縮です」
 会話しながら、今回は接触が少ない事を刃は喜ぶ。
 単純に好きでもない相手からの接触は大変不快なものであり、猥雑な言葉も耳が腐れる。とでも文句を言いたいくらいだった。
「ベッドないみたいだけど、どうしちゃったの?あれ、なんかエロくて良かったのに」
「壊れたんで処分しただけです」
「あー、刃チャンの恋人、激しそうだもんね」
 何かを納得したような口ぶりで、見当違いの想像を口にする男に『はぁ……』 と、半ば溜息交じりで返す。作業机の隣にベッドがあって、何が厭らしいのか、想像力がたくましい。

 面倒な会話の後で仕様書を貰い、刃は男を送り出す。
 比較的、短時間で帰ってくれた事にも刃は気分が良くなり、珈琲を淹れに行く。

 鏡を見ない刃は気付かない。
 首筋に、夜ごとたっぷりと丹恒に愛された証がある事に。

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