忍者ブログ

スターレイル用

秘事の協力者

・応星出て来ないけど景+楓×応の共有話
・短い(1600字くらい
・景元と丹楓だけは幸せ
・応星は出てこないけど右応
・今しか出来ない妄想(2023/08/16)






 今回も、特に問題は無いか。

 鱗淵境の古海に封じられた健木を見上げながら、羅浮将軍、景元は隣に立つ持明族龍尊、丹楓に話しかける。
「変化がないのは、ここも仙舟も同じだな」
「仙舟はともかくとして、健木に変化があっては困るよ」
 健木が暴走すれば仙舟が滅びるような事態になりかねず、丹楓がそれを知らない筈もない。では、発言の意図は何か。
「何か変わって欲しいものでも在るのか?」
 景元が問えば、丹楓はふん。と、鼻を鳴らし、
「変わって欲しい。ではないな、変化がない俺たちの時間の中に、唯一、変わっていくものがあるだろう」
 謎かけのような言葉を吐く。
 何を、否、誰を指しているのか景元は直ぐに察し、鼻白んで表情を険しくさせた。
「応星か?」
「短命種の寿命は幾つ程度だったか。無理ばかりしている彼奴は、普通の短命種よりも更に生きる時間が短かろうよ」
 丹楓、景元を含め、周囲が気がけてはいるものの、職人気質で集中すると睡眠も食事も疎かにする応星は、自らの命を削りながら日々を生きている。無理が祟って倒れた回数も片手では足りず、しかし、懲りずに『ごめん』と、困ったような顔で笑いながら同じ行動を繰り返す。
「丹楓、何を考えている」
「本当に解らないのか?貴様が、俺の考えを……?貴様が飛ばした雀たちもここまでは入って来れまい」
 景元が仙舟中に潜ませている密偵の存在を仄めかせ、丹楓は腹を割れと言外に諭す。
 持明族と仙舟人、種族、性格、考え方は全く異なれど、二人は根本の部分では良く似ていた。故に忌み物を滅する戦いの場に於いても互いの考えを読み合い、離れた場所でも、まるで背を預け合って戦っていると思えるほどの息の合いように周囲は賞賛したものだった。

 何を考えているか。
 丹楓が欲している答えは。

 景元は嘆息し、首を横に振る。
「短命種を長命種にする行為は重罪で、そもそも応星は長生を望んではいない……」
「詭弁を抜かす……、ならば景元。『貴様』は、どうしたい?」
 お行儀の良い模範解答など、求めてなどいないとばかりに、どうする『べき』か。ではなく、景元自身が『どうしたいか』、心の内までも見透かすような藍玉の瞳で景元を見据え、更に一歩詰め寄り、真意を吐かせようと迫る。
「俺は、その望みを叶えてやれる。さて、『どうする?』」
 答えなど、決まっているとばかりの傲慢な問いかけ。

 あぁ、創世の男女を惑わし、禁忌に触れさせたのは蛇の姿をした存在だったか。

 遠い惑星の創世物語を描いた書物の内容を思い返しながら、景元は丹楓からの提言に抗い難い魅力を感じていた。禁忌に誘惑された男女も、同じように心の奥底にある燻っていた願望を自覚させられ、手を伸ばさずにはいられなくなったのだ。
 景元は目の前の男が憎々しくもあり、期待を抱いてしまう自分を否定出来ずにいた。
「敵わないな……」
「小童が、俺を誤魔化せると思うな」
 諸手を挙げた相手に対し、丹楓が牙を見せながら皮肉気に表情を歪めて嘲れば、景元は負けじとわざとらしい笑みを浮かべ、 
「おや、私の協力がなくとも良いと仰せられますかな、龍尊殿?」
「それは困るな」
 一矢を報いながらも賛同を示せば、丹楓は我が意を得たり。と、ばかりに笑みを深めて喉を鳴らし、機嫌良く龍の尾を揺らめかす。
「俺だけでは幾ら試算しても一手が足りんでな」
「はは、我が神機妙算、ご期待に添えると約束しよう」
 二人は健木を離れ、帰路につきながら如何に罪を露見させず、行動を起こすかの算段を語り合う。
 完全に、応星の意思を黙殺した我欲である。が、今の二人にとって最善の選択と言えた。

 景元は鱗淵境の入り口で丹楓と別れ、神策府へと戻る星槎に乗ると一つの疑問が浮かび、腕を組んで思案する。
 もしも、自身が丹楓の提言を完全に拒絶したらどうしていたのか。足りない一手を如何にして補う算段をつけたのか。景元と共謀出来ずとも、応星の時間は日一日と減っていく。

 丹楓が行動を起こさない理由がない。

 嫌な想像が脳裏を過り、景元は自身の髪を撫でて考えを打ち消す。
 もう可能性の潰えた未来を考えても意味は無いのだから。

拍手

PR

コメント

プロフィール

HN:
No Name Ninja
性別:
非公開

P R