・既に関係がある忌カカ
・前提にモブカカと表現あり
・絆されまくりのカカさん
・R18
カカロが前線基地の通路を歩き、忌炎の元へと向かう。
ほんの数日前に無音区の大量発生が起こり、掃討が済んだばかり今、補給物資も切れてしまったため、カカロ率いる傭兵部隊は前線の拠点に帰還し、束の間の休息をとっていた。
次の遠征へ向かう前に、必要な物資の提供を受けるための許可証へ印を押して貰う必要があり、カカロは将軍たる彼の元へと訊ねたが、何度扉を叩いても返事がない。
室内に不在であれば誰かしらが忌炎の姿を見ていそうだが、兵に所在を訊ねた際は、部屋に居るとの情報を貰ったばかりだ。兵が嘘を吐いたとは思えない。
「失礼する」
幾許かの逡巡の後、取っ手を回せば鍵は掛かっておらず、扉はすんなりとカカロを迎え入れた。そして、視界に飛び込んできた光景は、筆を片手に机に突っ伏して眠ってしまっている忌炎の姿である。
側に寄っても起きる気配はなく、目元にはくまが出来ていた。
無音区の掃討に力を使い過ぎて未だ体力が回復していないのだろう。医者の不養生とは良く言ったもので、他人の世話ばかり焼いて己を疎かにする忌炎らしいと言えばらしい。しかしながら、こんな場所で眠っていてはとれる疲労もとれはしない。カカロが肩を揺すっても顔を歪めて呻くだけで瞼は開けず、仕方なく重い荷物を持つように肩に担いで隣の仮眠室へと移動し、寝台へと横たえる。
担がれても起きないとなると、最早、寝ていると言うよりは気絶でしかなく些か心配になってしまう。このまま寝かせているだけで、きちんと目を覚ますのか。目を離した後、衰弱して呼吸が止まりでもしないか。
「忌炎……」
カカロが寝台に腰掛けながら忌炎の名を呼んだ。
休ませた方が良いと頭では解っていても、目を開けて欲しい気持ちが優先されてしまい、カカロの手は忌炎の顔を遠慮がちに撫で、体温を確かめる。
「擽ったいな……」
ほんの数分ほど、声をかけながら指先で突くような、拙いとも表現出来る触れ方をするカカロの手で意識を浮上させたようで、忌炎が手を握りながら微かに微笑む。
「酷く疲れているようだ。薬か何か貰ってくるか?」
目を開いた事へ安堵しつつも机で寝たせいか体温が低く、顔色も芳しくない忌炎をカカロが案じるも、首を振られてしまう。
「薬よりもお前が側に居てくれる方が元気になりそうだ」
気怠げなと息を吐きながらも忌炎が上体を起こし、カカロの頬に触れて口づけながら体を寄せる。
「良かったらお前からも抱き締め返してはくれないか?」
「あ、あぁ……」
疾うに体の関係を持ちながらも、積極性のないカカロへと忌炎が強請ればぎこちないながらも背に手が回される。
「横になっていた方が良くないか?」
「いや、こうしていた方が気が休まる。抱き締められると疲労や心労が軽減されるとの研究結果もあるんだぞ」
元軍医である忌炎のが言うのならそうなのか。
数分でも横たわって目を閉じていた方が疲れもとれそうだが、訝しみつつも首元に顔を埋める忌炎を抱き締めながらもカカロは落ち着かない。来る前に水を浴びて汚れは落としてきたが、臭くはないだろうか。と、口には出さずともそわそわと気が急いてしまう。
「カカロ、もっと触ってもいいだろうか?」
「構わないが……」
本当に抱き締めるだけで効果があるのか、妙な方向に元気になってきた忌炎に許可を出すと、自らの腕甲とカカロの上半身の装備を外し、肌に直接触れて胸を揉みだした。忌炎が楽しそうな面持ちであるため、特に言及はしないまでも、カカロ本人にとっては男の胸を揉んで何が楽しいのか謎である。
まだカカロが幼いと形容出来る時分にも、やたら胸を触ってくる男は居たが、鷲掴みにされて爪を立てられ、肉が千切れてしまいそうな痛みに悲鳴を上げれば煩いと髪を引かれて叱責されるか、殴られるか、顔を寝台に押しつけられて呼吸すらままならなくなるかのいずれかであったため、良い印象は決してないのだが、忌炎の触れ方は痛みもなく戯れるような様相であり、彼との行為に痛みを伴った経験は皆無であるため黙って受け入れる。
ぼんやりとされるがままのカカロであったが、忌炎の指先が乳首を掠めると、不意にぞく。と、した感覚が背筋を這い上がった。
胸を触られても性感を得るはずは。そんな否定をしながらも、彼の手汗か、自らの肌が汗ばんできたのか、肌に張り付くようにねっとりと胸を揉み上げる動作へもどかしさを感じ、忌炎がカカロの腰を引き寄せながら胸に舌を這わせ、乳首を口に含むと体が震えると同時に、甘ったるい声が出た。
そんな己の驚いてカカロは思わず忌炎を突き飛ばし、腕で胸を庇う。
「それだけ元気になったならもういいだろう?残像が攻めてきたらどうする。余計な体力は使うべきじゃない」
解り易い詭弁を弄してカカロは逃げを打つも、忌炎は目を輝かせながらにじり寄ってくる。
「ここいらの残像は殲滅したばかりだ。多少の余暇はあるだろう」
詭弁に正論で返され、逃げ道を塞がれたカカロは言葉に詰まる。
元々、言葉を弄するような人間ではないため、こうなればどう足掻いてもカカロは分が悪い。
「可愛いな」
忌炎はうっとりとカカロの頬を撫で、髪を梳きながら目元に口づける。
「興奮したなら嘗めてやるから……」
「今はいいかな」
慣れた方法で回避を試みるも、忌炎に拒否されてしまった。
「大丈夫、痛い事も怖い事もしない。俺はお前を可愛がるだけだ」
「わかった……」
忌炎との行為は、カカロにとって砂糖漬けにでもされているようで、慣れている筈の行為が別物に感じられてどうにも慣れない。
忌炎から愛される者は幸せだろうな。
詮無い思考に耽りながら体を引かれ、寝台に押し倒されたカカロは忌炎からの口付けを受けながら胸を揉みしだかれて脱力する。元々がやり過ぎな程に世話焼きな男だが、褥の中でも他人を可愛がりたい欲求の方が強いようで、さっさと突っ込んで出して終わり。とはならない。その分、一々行為が長ったらしいのだが不快さはなく、心地好いばかりなのだ。
道具として、好まれやすいらしい己の見目や、体を利用しながらも行為自体は気持ち悪くてどうしても好きになれなかった。ただの処理として、義務としてするものとの認識があったはずが、忌炎との行為は別物過ぎて怖くなる事すらあった。
「んっ……」
やわやわと胸を揉まれ、濡れた舌が乳首を撫でれば鼻に掛かった声が出て体温が上がる。
胸で感じ入るなど今までの相手なら『売女』とでも嘲弄していただろうが、忌炎の口からそんな言葉は出て来ない。寧ろ、自身の手によって乱れる姿が嬉しいのか敏感な部分を余計に弄りたがる。
「あ、赤子でもあるまいし、そんなっ、ぁ……」
「赤子がこんな触り方はせんだろうよ」
しつこく胸を舐ってくる忌炎を止めようとしても、上擦った声では説得力も何も無く、逆に喜ばせるばかりで、カカロが身に付けていた腰の革帯も外され、褲が引かれて下半身が空気に晒される。
厳めしい軍靴までは脱がされないまでも、忌炎の手は遠慮無く後孔に触れ、生暖かいものが肌を伝う感触から油でも入れた容器をいつの間にか手に取り、握り込んで温めでもしていたのか。用意周到というか、まめな男だとつくづく思う。
濡れた指が体内に潜り込んでくる感覚に息を詰め、いつも通りに優しく開いていく動きに気が抜ける。処理のために体を繋ぐ相手に、こんな真似をしなくても。そう思うと同時に、この優しさに溺れてしまいそうになる。
じっくりと濡らされた穴に長大な異物が入り込み、揺さぶられれば己のものとは思えない甘えた声が出て、胎の奥が締め付けられるような快楽が全身を駆け巡る。
忌炎に抱かれるまで、知らなかった感覚に悶え、微かな恐怖と悦楽が綯い交ぜになって思考が混濁した。
ゆったりと奥を突かれ、カカロは自らの腹を押さえながら追い上げられるものに身悶えて、ちか。と、目の前が明滅し、達しそうになると忌炎の腰に足を絡めた。ほとんど無意識で拘束してくる足を外せず、極まってうねる肉壁の収縮に忌炎の気も持って行かれてしまい、カカロの体内へと精を吐き出す。
「すまない……」
「構わん」
疲労状態からの興奮は忌炎の体力をかなり奪ってしまったようで、彼の目はカカロを見ていても閉じかけて胡乱になっていた。
既に限界だろう忌炎の体をカカロは抱き寄せ、背中を叩くと直ぐに寝息が聞こえ出す。
しっかり眠った事を確認し、カカロは体を反転させて体内に納められた性器を抜き、零れそうな精をそのままに褲を引き上げ、身なりと整えると忌炎の性器を嘗めて拭い、管に残ったものも吸って呑み込み、彼の服も整えてやる。
持ってきた認可が必要な書類は、置いておけば見るだろう。
この戦争が終わればカカロは皇龍を離れ、傭兵として雇ってくれる新たな商売相手を探す。
民を苦しめる残像との戦争が長く続けばいいとは思わないまでも、精悍な顔をした忌炎が間抜け面で眠る姿が見られなくなるのは少しばかり惜しかった。
利害関係はあっても惜しむような関係性を築いた事がなかったカカロが、いつか来る別れを思うとどこか寂しい心地となる。お人好しな忌炎に感化でもされたのか、随分と、甘ったれた思考になってしまった己に自嘲しそうになり、静かに部屋を後にした。